もうひとりのフレンズ
@den2do
another frends
僕はみんなと一緒に旅が出来て嬉しかったです。
「ボスどうしたの?」
と、サーバルが少し不安そうに尋ねた。
しかし、僕は答えられない。
僕にはサーバルと
「どうしましたか、ラッキーさん?」
「少シ調子ガ悪イミタイダネ」
心配そうにかばんが僕の身体を
あの巨大セルリアンを前にして、機械なのに僕も緊張してしまったんだろうか。
身体を数度震わせて、いつも通りに動いてみせる。
「大丈夫。イケソウダヨ」
「よーし、それじゃあレッツゴー!!」
サーバルの掛け声と共に、僕たちは巨大セルリアンの前へ向かう。
光に引き寄せられる習性を利用して船まで誘導し、あの黒いセルリアンを海に沈めるためだ。
でも、その時僕は船と一緒に……
淡い、けれども確かに「ある感覚」が機械の身体に存在しているのを感じる。
これがヒトやフレンズの言う恐怖なのかな。
いや、今はそんなことを考えても仕方ない。
パークやみんなを僕が守るんだ。
それに……僕が壊れても他の僕がこのパークにいくつもいる。
だからきっと、かばんもサーバルも大丈夫。
そして僕たちは巨大セルリアンと相対した。
大きい。
比喩的表現や
圧倒的な存在感。
ヒトのかばんや、フレンズのサーバルよりも鋼の僕はそこそこ頑丈な自信がある。
その僕ですら、あの質量の前には無力だろう。
眼前に存在するのは、具現化された確実な死だ。
そしてあの無機質な目。
元が僕らと同じ存在とは思えない。
いや、僕も昔は似たようなものだったかな。
かばんやサーバルとじゃんぐるちほーで出会えて、僕は変わったんだと思う。
怖くないと言えば嘘になる。
だけど、かばんやサーバル、ハンターのみんな、そしてフェネックに……ええと誰だっけ。
そうそう、アライグマに危害が及ぶ方がもっと怖い。
僕にライオンやヘラジカのような誇れるような勇気はないけれど、怖いからこそみんなを守りたい。
ライトを当てると、セルリアンがこちらへ向かってくる。
大きいだけあって、動きがゆっくりでも移動速度は速い。
だけど、逃げ切れる。
後ろ向きに進んでいるとはいえ、こちらの方が足が速い。
それにこの旅の間に色んなちほーを進んだお陰で、多少の無茶な動きは慣れっこだ。
「ボス、今日はカッコイイね」
「マカセテ」
褒められたような気がして、少し嬉しくなってしまう。
いい感じだ。
このまま何事もなければ、無事港まで誘導を……
「……ッ!?」
と思ったら、何かに引っかかった。
ガクンと身体が大きく揺れる。
どうやらタイヤが木の枝を噛んでしまったようだ。
引っかかってしまって動けない。
だけど……
「パッカーン!!」
一瞬、タイヤを通常回転させてすぐバックに戻すことで木の枝を弾き飛ばす。
流石にそう何度も何度もポンコツっぷりを晒すもんか。
その時だった。
巨大なセルリアンがゆっくりと上体を起こし始めたのだ。
まるで人間の赤ん坊が初めて立ち上がったかのように。
(二足歩行?)
そう僕が誤った推測をした次の瞬間、セルリアンが予想外の行動をとってきた。
ゆらり、とこちらへ向かって倒れ込んできた。
嘘!? 速っ……重力加速度…
近っ…回避…
間に合わ……
…………………………あ
衝撃。
そこで僕の記憶は途切れた。
みんなは無事だろうか?
それはわからない。
でも、ひとつだけハッキリわかっていることがある。
僕は、もう壊れてしまった……
あとは、以前のように太陽と星が巡るのを見つめながら、悠久の時の中ただ朽ちていくのを待つだけだ。
かばんにサーバル……僕は君たちと出会えて本当に良かった。
忘れ去られ、ただ朽ちていくだけの存在だったこの僕が本来の役目を果たすことが出来て。
そして何より…………
僕はみんなと一緒に旅が出来て嬉しかったです。
その時だった。
「これなのだ!! アライさんが見つけたのだ!!」
「よくやったのです」
「でも、時間がかかりすぎなのです」
「本当だよアライさーん」
「フェネックまでー!!」
「いいから、とっととこの丸いのをつけるのです」
幾人かのフレンズが僕の周りで何事かを語り合っている。
そして……
ゆうえんち。
幾人ものフレンズが遊んでいて、あの日……ミライさんやフレンズ、そしてたくさんのヒトがいた時を思い出す。
そこで僕はみんなと再会を果たした。
かばんにサーバル
それに、あのかばんの腕についてるアレは……ん?
小さくなってるけど、ひょっとしてラッキービーストさん?
あれラッキービーストさんなの!?
「わぁ、バス!!」
「直してくれたんですか!!」
サーバルとかばん(+ラッキービースト)が僕を見て声を上げる。
僕は……
ジャパリバスは……
これからもみんなと一緒に旅が出来て嬉しいです。
もうひとりのフレンズ @den2do
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