ポチとカイザー~猟犬と野犬の風船~

アほリ

1#風船を追いかける猟犬

ポインター犬のポチは猟犬だ。



 今まで、イノシシからクマまでハンターの主人の為に追い詰めてきた勇敢な猟犬だ。



 垂れ下がった耳をたなびかせ、茶ブチの体をしなやかにうねらせ、猟犬のポチはハンターの主人に駆け寄ってきた。



 「今日はこの風船を使って、狩猟の『トレーニング』だ。」



 主人が、ポチが牙でくわえてパンクしないように風船をそこそこ控え目に口で膨らませて吹き口を緩く縛って、ぽ~ん!と手で突いてポチに追いかけさせた。





 「はっ!はっ!はっ!はっ!」





 ポチは垂れ下がった耳をなびかせて、主人が放った風船に向かって全速力で駆けていった。


 風船はそよ風に煽られて、ぽーんぽーんと何処までも何処までも地面をバウンドしながら転がっていった。

 

 「待ってぇーーー僕の獲物!!」

 

 はっはっはっはっ!!


 風船は、何時もは転がっていく途中で尖った岩や草の先に触れてパンクしてしまう。そうなる前にポチはこの延々と風に煽られ転がり続ける風船を何とかして縛った吹き口をくわえて捉えてハンターの主人の居る場所へ持って帰らなければならなかった。


 「困ったなあ・・・困ったなあ・・・どっかでパンクしててもいいから、早く見つけ出さないと・・・!!」


 ポチはそう言うと、黒光りする鼻を突き上げてクンカクンカと漂う風船のゴムの匂いを探った。



 クンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカクンカ・・・




 ぷしゅ~~~~~~!!ぶおおおおーーーーーーー!!



 「!!」


 突然、目の前から吹き口から空気を吹き出して、一個のゴム風船が吹っ飛んできた。


 「むぎゅっ!!」



 ぶおおおおーーーーーー!!


 ぷしゅ~~~~・・・


 風船はポチの鼻にぶつかると、中の空気が抜けきってポトンと下に萎んで堕ちた。


 「あーー!!これ、ご主人様の突き上げた風船だ・・・何で吹っ飛んで萎んじゃったのかなあ?」



 はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!



 「猟犬?僕と同じ??」




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