第8話
自分でこんなことを起こしておいて祝福だ?マッチポンプと言葉にするのも恥ずかしいレベルだなこいついつか殺す。
よし、取り敢えずの方針は決まった、まず向かうべきなのは体育館だ。周りと違う行動をすると目立つから、そこへ避難するという流れには乗っておくべきだろう。その他諸々の機能はまた後で確認することにしよう。
ここは4階だから、体育館へ行くには3階の渡り廊下から別館へ渡って降りればよかったはずだ。そうと決まれば早速別館と渡り廊下をつなぐ理科棟へ向かおう。
そうして俺が教室から出たところをゴブリンが出迎えてくれたのでサクッと始末して長い廊下を歩き出した。
歩くことしばらくして理科棟へとやってきたのだが、なんだか騒がしい。これは、ゴブリンの鳴き声と…人の泣き声だ。
「誰かいませんか、助けてください…!」
女の子だろうか。声が聞こえるのに姿が見えず、なおかつ前方に見える教室にゴブリンが群がっているので、多分そこに立てこもっているのだろう。助けを求める声は疲れているように思えるが…ふむ、
…………よし、スルーして回り道しよう。
今までの感触から言って教室のドアと窓に群がるあの6匹のゴブリンを相手取るのは出来なくもない。が、ここで彼女を助けたりしてそれが誰かに知られようものならとんでもなく目立つことは火を見るより明らかだ。何せ教室に出た1匹のゴブリンで死人が出たんだから。
「誰か、いませんか…ぐすっ、うう…怖い…助けて…」
………まあ、回り道をして時間がかかり、1人で体育館に現れればそれだけ目立つことになるな。多少危険だが、この道をバレないように歩いて行くことにしよう。…バレないように。
廊下に破裂音が響いた。
教室の前にいたゴブリンが一斉にこちらを向き、敵意剥き出しで睨みつけてくる。
…ああ、俺としたことが。何もないところでつまづいて音を立ててしまった。最近多いんだよな、歳かな。
自分でも白々しいと感じながらそうやって嘯いていると、ゴブリンが一斉に動き出す。
先陣を切って襲いかかってきたゴブリンを躱し、棍棒を振り下ろす手首をとりながら勢いを利用して体勢を崩し、小手返しで棍棒を手から離させながら背中から叩き落とす。
借りた棍棒を2匹目の棍棒に合わせて掬うように跳ね上げると、ガラ空きになった喉に棍棒を突き込んだ。2匹目の後ろから迫っていた3匹目は喉を押さえてうずくまった同胞につまづいて転んだので右に避けて後頭部を踏みつけ、灰にした。
一連の動作を見て後ろに控えた残りの3匹が怯んだように後ずさったのでついでに2匹目の息の根も止める。
ていうかなんで一列で来んの?馬鹿なの?いや楽でいいんだけど。
危機感を覚えたのか学習したのか、左右から4匹目と5匹目が同時に掛かってきた。しかも剣を持ったレッドゴブリンだが、いるのはわかっていたので問題ない。むしろその剣を寄越せ。
とは言っても2匹の同時攻撃、その場に留まれば命はない。
即座に右側に踏み込む。振り下ろされる剣を棍棒で沿わせるようにして受け流し、不要になった棍棒をアンダースローで左のレッドゴブリンに投げて牽制しながら右の奴の目を潰す。
ぐじゅりという嫌な音と生暖かさを感じながらも、眼窩に指を引っ掛けて動きを誘導し、左から迫る剣を防いだ。肉壁にしたレッドゴブリンに刃が食い込む。
おお、なんと酷いことを。同胞に攻撃するなんて。
左にいた奴は踏ん張って剣を引き抜こうとするも、肉が引っかかってなかなか抜けない。
隙を晒した左の奴に体重を乗せた前蹴りを放つ。俺の助力を受けたレッドゴブリンは見事に剣を引き抜くことに成功する。
その後は仰向けに倒れて頭を打ち、意識を失ってしまったので丁重に剣を
「さて、最後はお前だ」
6匹目に向かってそう言い放つ。今まで偉そうに見ているだけだった最後の1匹は、革鎧を纏い、丸盾と長剣を身に付けたレッドゴブリンだった。
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