第9話


同胞をことごとく惨殺されたレッドゴブリン、(RPG風に言うならゴブリンソルジャーだろうか)は最大限の警戒をしながらこちらへにじり寄って来る。そしてある距離まで来るとそれ以上は近寄ってこなくなった。盾を構え、受けの姿勢に入っているようにも思える。

意図してのものかはたまたただの偶然なのか、相手の力を利用するという形で反撃カウンターしていた先程までの俺のスタイルに適応したように見えなくも無い。

ある程度の学習知能は備わっているということだろうか。となると1日目に出現した個体が1ヶ月後には学習して厄介な敵に変わるなんてこともありうる。


そんなことを考えながらゴブリンソルジャーの頭を盾ごと叩き斬る。

そもそもこのゴブリン達は小鬼と言うだけあって1メートル半くらいの大きさしかない。同じ得物を持った時点で間合いの利はこちらにあるのだ。余裕ぶって観戦していた割にはあっけない死に様のゴブリンソルジャーであった。


あとは寝てる奴らにトドメを刺してさっさとここから立ち去ろう。

ピクピクしていたノーマルなゴブリンを灰に変え、レッドゴブリンにきちんと剣を返して証拠の隠滅を図る。後に残るのは灰だけとなった。


流れるように事後処理を済ませて体育館へ歩き出したところで教室のドアがゆっくりと開かれる。恐る恐ると言った様子で顔を覗かせたのは、目元を赤くした女子生徒。


その視線の先にいるのはもちろん、灰の只中に立つヒョロい男子生徒。

俺だった。


これ……不味くない?

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