1話 『冒険者ギルド』
「試験?」
ルシードは聞き返した。禿げ上がった頭の、髭面で筋肉質の男が大きくうなずき笑った。
「トレジャーハンターになる前にやったろ? あれと同じような感じだ。がっははは」
ルシードは腕を組んだ。そろそろ次の段階に進め、というわけか。
トレジャーハンターになるには”資格”が必要だった。世界中に遺跡が現れた影響で、冒険者が増え続けていた。それと比例し、各地で問題が起きていた。それらを支援するという名目で、冒険者を管理するための”ギルド”という組合が設立されたのは、つい最近のことである。
だが、ギルドの支援を必要としなければ無理にギルドに属さなくてもいい。資格がなくとも、トレジャーハンターにはなれるし、名乗ることができる。しかし、大陸を渡っての冒険の許可がおりなかったりと活動が制限されることもある。そして”教会”と揉めても仲裁に入ってもらず、最悪処罰されてしまう。もっともこうした組合の存在も”教会”から認められているわけではないのだが。
ルシードのような駆け出しの冒険者は、ギルドに属すということが基本となる。知識も実力もないうちは支援が必要だ。さらにギルドでは仕事を斡旋してくれる。町の困っている人々がギルドに依頼を出し、冒険者による問題解決を待っているのだ。問題を解決すれば、ギルドを介し、依頼人より報酬が支払われる。また、依頼人から特別に何かをもらえることもある。ギルドに属することは、冒険者にとっては得なのである。ギルドはこうして、冒険者により起きる問題や事件を防止している。
ギルド公認のトレジャーハンターには、いくつかの階級がある。階級ごとにその行動範囲を決め、管理するためである。その階級は”試験”に合格することによって上がっていく。ハンターとしての実力が認められれば、活動の場が増えるというわけだ。試験なんてくだらないといって、危険地帯に足を踏み入れた冒険者たちの大半が命を落としている。階級はひとつの判断基準となり、冒険の生還の確率を大幅にあげていた。
ちなみにこの禿げた髭の男は、ここのギルドのマスターである。ルシードは次の階級に上がるための試験を勧められていた。
「ちょっと待った! 俺にも試験を受けさせろ!!」
勢いよく扉を開けて登場したのは、あの男。ジャンであった。
「ジャンか。お前にゃまだはやい」
マスターは禿げ上がった頭を撫でながら言った。
「んだよ! なんでそいつがよくて、俺は駄目なんだよ! 俺は絶対に試験を受けるからな!」
そう言っても、受けさせるか受けさせないかを判断するのはこっちなのだがと、マスターは苦笑する。
「……ま、いいか。受けるだけ受けてみろ」
「ぃよし!」
こぶしを握り締め喜ぶジャンとは対象に、マスターは冷ややかだ。まぁ、現実を目の当たりにするのもいいだろう。マスターはそう思った。
「試験は明日。ここより東、ラスカの遺跡で行う。時間は正午。詳細は現地で担当のものが伝える。以上!」
こうしてルシードとジャンは、試験を受けることになった。
そして、翌日。
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