記憶 1

 それがいつの記憶なのか、わからない。

 

 黒い雲に覆われた空からは紅い雪が落ちてくる。


 地面に横たわる死者は起き上がり、生者を喰らう。鎧を着た騎士たちがかつての仲間に剣を向けている。

 誰もが皆、叫んでいる。泣いている。絶望に支配された世界。

 やがて静寂が訪れる。


 次の場面は、船の上。

 漆黒の海と風に揺られ、船は行く。どこへ?


「大丈夫。わたしが守るからね」

 優しい声とぬくもりに包まれている。

 凍てつくような寒さも、それで耐えられた。


 凄まじい風が、やがてその声とぬくもりを奪っていった。

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