エターナル・ファンタジー ~女神の涙~

るーいん

第1部 トレジャーハンター!

第0章 ジャン

『始まりの扉』

 それらはいつから存在していたのだろうか。世界の至る所にある古い建築物、人工的に造られたような洞窟。それらは神聖なる聖域として、誰も立ち入ることが許されていなかった。

 誰が決めたのかはわからない。しかし、そういう”掟”があった。そして聖域に足を踏み入れれば、大きな災いが降りかかるとされていた。

 人々は掟に従った。故にそれらは、風景として存在していた。誰も興味を抱こうともしなかった。

 ある男を除いては。

 

 それはただの知的好奇心だった。そこには何があるのだろう。知りたい。単純なその気持ちが、全ての発端となった。

 男は聖域、古からの建造物に躊躇なく足を踏み入れた。

 奥底には、未知が溢れていた。

 棺のようなものの中には、古代人と思われる干からびた死体、ミイラが安置されていた。棺を装飾している多くの宝石、周辺には箱のようなものに金銀財宝が保管されていた。

 男はこの建造物が、古代の地位のある人物の墓であると推測した。

 男はすぐさま知人たちに報告し、協力を求めた。何人かは掟を破ることを恐れたが、何人かは協力的だった。

 そう。彼らもまた、知りたかったのだ。

 空白となっている”歴史”を。


 彼らは建造物から持ち帰ったミイラや白骨化した動物の骸、数々の物品を分析することにした。知識や技術に乏しく、それらを分析する作業は難航した。

 そこで彼らは世界中を旅することにした。世界各国から様々な文献・情報、そして技術を入手し、古の建造物を調査するのだ。

 多くの協力者が必要だった。莫大な時間と労力が必要だった。

 だが、彼らにはそのようなことは問題とならなかった。

 好奇心の赴くままに、未知を明かしていくという喜び。夢中になれる冒険の日々。

 それが全ての始まりだったのだ。彼らはその扉を開けたのだ。



 彼らの功績は、世界の発展と新たな時代の開拓へとつながる大きなものとなっていった。そして数百年前、いや、それよりもずっと古い、空白となっていた歴史は解き明かされ始めた。多くのものが彼らに感謝した。

 しかし、その功績を”大罪”と認識するものたちもいた。掟を破った彼らは、一部のものから蔑まれた。敵を作った。

 問題は掟を破ったことだけではない。古の建造物――遺跡に足を踏み入れるものが後を絶たなくなったからだ。遺跡には危険も数多くあるが、古代の秘宝が眠っている可能性もあった。一攫千金を夢見た者たちが、遺跡を荒らしてまわったのだった。

 それは”神”の意思に反するものとして、”教会”が粛清に動きはじめた。時に彼らは衝突し、多くの血が流れた。それでも人々は冒険をやめなかった。そこには失われた夢がある。人々は夢を掴むために冒険に出た。


 それから少し時が流れた今。

 世界はまだまだ、未知に溢れている。それを明かして世界に貢献しようとするものもいれば、物欲を満たしたいだけのものもいる。悪名でも、売れれば有名となる。

 世界を解き明かそうとするものたちは、”考古学者”と呼ばれた。以前は積極的に遺跡に足を踏み入れていた考古学者たちであったが、教会との対立を恐れ、表立った行動は控えるようになっていた。その代わり、欲に塗れた”彼ら”に依頼し、遺物を入手し研究することが主となっていた。

 彼らとは……一攫千金を狙い、危険を顧みずに世界中を飛び回る”鳥”たち。

 

 人々は彼らを――トレジャーハンター、と呼んだ。




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