おかえし
けろりん
おかえし
「ふぁー、狩りごっこしたらノドが乾いたよー。かばんちゃん、水飲みに行こ!」
いつものように、さばんなちほーで遊んでいたサーバルとかばん。一休みするために、高台にある池に向かった。
到着すると早速、池のほとりに腰をおろし、新鮮な水をゴクゴク。澄んだ水が二人の疲れを心地よく癒やしてくれる。
「今日はカバさん、いらっしゃらないですね」
「そうだねー、残念!
あれ?今、水の中で何か光らなかった?」
「うん、何かキラッとしたような…」
サーバルが一生懸命手を伸ばすが、届かない。かばんは、手近にあった木の枝を使って、光った辺りをゴソゴソした。すると、底に沈んでいたのは、1枚のコインだった。
「これって、前にツチノコさんが見つけたやつでしょうか」
「うん、あのときツチノコすっごく喜んでたから、これも持っていってあげよう!」
「おおー!こ、これは、ジャパリコイン!!しかもフチにギザギザがついた、レアものじゃないか!!!このコインは初期の時代に作られたものでだな…」
サーバルからコインを受け取ったツチノコは、サーバルたちが想像していた以上に大興奮。コインを色々な角度から眺めては、誰に聞かせるともなく、早口で解説を語り始めた。
「よかったね。ツチノコ、すっごく嬉しそう」
「そうだね。なんだかぼくも嬉しくなってきました」
かばんとサーバルが、ツチノコのそんな様子を微笑ましく見守っていると、二人の視線に気付いたツチノコは、ハッと我に返ったのか、頬を赤らめて解説を中断し、恥ずかしそうな小声でこう言った。
「その、なんだ、わざわざありがとうな」
最後の方は、ほとんど聞き取れない程のツチノコの声だったが、かばんとサーバルはにっこり笑って「どういたしまして!」と帰って行った。
その日の図書館。日も暮れて少し寒さを感じ始めた頃。
「博士、冷えてきましたし、中でじゃぱりまんでもいかがです」
「そうですね。こういう寒い日には、料理が恋しくなるのです」
コノハ博士とミミちゃん助手が、図書館の扉を閉めて中に入ろうとしていると、ガサッと物陰からけものの気配がした。
「おや、そこにいるのはツチノコですね」
「バレているのですよ。我々は夜目が効くので」
隠れていたツチノコが、仕方ないなといった風に姿を現した。
「どうしたのです、また遺跡の調査ですか」
「いや、今日はちょっと…」
何故か、モジモジとしているツチノコ。そして意を決したように、声を出した。
「実は、サーバルに何かおかえしをしたいのだが、サーバルの好むものが分からなくて…かばんには皆でお祝いをしたが、サーバルには何もしていないから…」
おお、という顔になり、顔を見合わせた博士と助手。
「確かにそうなのです」
「ツチノコは見かけによらず、気づかいのできる子なのですね」
さらに真っ赤になって、そういうのじゃなくてだな!借りは作らない主義なのだ!などとモゴモゴしているツチノコを横目に、博士と助手は早速相談を始めた。
「サーバルが喜びそうなもの…何でしょうね」
うーん、と首をかしげていると、遠くからキコキコとこちらに向かってくる乗り物の音が聞こえてきた。
「博士ー、バスの場所、教えて欲しいんだけどー」
やってきたのは、アライさんとフェネックだった。博士から話を聞くと、二人もすっかり乗り気になった。
「面白そうなのだ!アライさんも仲間に入れるのだ!」
「そうは言うけどさー、アライさんはサーバルの好きなもの知ってるのー?」
「アライさんに任せろなのだ!こういうことは、かばんさんに聞けばいいのだ!かばんさんは何でも解決してくれるのだ!」
翌日。図書館に呼び出されたかばんは、話を聞いてしばらく考えた後、こう答えた。
「じゃあ、フレンズの皆さんに協力してもらいたいんですけど、ちょっとジャパリカフェに集まってもらえますか」
何も知らされずに、ただ「夕方ジャパリカフェに来て」とだけ言われたサーバル。トキに運んでもらい、カフェに到着すると、そこにはたくさんのフレンズたちが集まっていた。
ツチノコ、アライさん、フェネックはもちろん、ライオンやヘラジカ、キタキツネにギンギツネ、タイリクオオカミやビーバーなども。カフェには入りきらないので、山頂の芝生の広場でサーバルを待っていた。
「どうしたの、みんな?」
不思議そうにしているサーバルに、かばんが近づく。
「あのね、みんなからサーバルちゃんに、見せたいものがあるんだって」
「え?なになにー??」
フェネックが合図をすると、フレンズたちは、それぞれ何かを取り出した。
それは、紙飛行機だった。
「じゃあ、3、2、1、ゴーなのだ!」
アライさんの掛け声で、みんなが紙飛行機を投げた。一斉に飛び立った紙飛行機は、夕焼けの中、ジャパリパークの空を舞っていく。
「うわー、すっごーい…」
たくさんの紙飛行機が飛んで行く姿に、感動で声が出せなくなっているサーバル。その様子を見て、ツチノコも満足そうにしている。
「フレンズさんたちに、紙飛行機の作り方を覚えてもらったんだ。ここから飛ばせば、遠くまで飛ぶと思って。ツチノコさんから、サーバルちゃんへのおかえしなんだよ」
かばんが説明する。最後の紙飛行機が見えなくなるまで、飽きずにそれを眺めていたサーバルは、ようやく気付いてツチノコに御礼を言おうと振り返ったが、ツチノコはいつものように、もうどこかに隠れてしまっていた。
「あれー、ツチノコはー?」
「ツチノコさんは、恥ずかしがり屋さんだぁねぇ」
アルパカ・スリも、カフェに大勢が集まっていて嬉しそうだ。そのお茶を入れているカウンターの向こうから、ツチノコらしき尻尾がパタパタと動いている。得意のジャンプでツチノコに飛びかかるサーバル。
「そこだぁー!」
「う、うわぁぁ、やめろぉお!」
「ツチノコ、ありがとうねー!!」
逃げようとするツチノコに、サーバルがぎゅーっと抱きついた。他のフレンズたちはそれぞれに、お茶を飲んだり、イスで爪を研いだりと、カフェを満喫しながら、その様子を眺めている。
ジャパリパークは今日も、ドッタンバッタン大騒ぎなのだった。
おかえし けろりん @kerokerorin
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