ジャパリンピック2017
沢田和早
われわれはフレンズ精神にのっとり、正々堂々と戦うことを誓います
「全国のフレンズファンの皆様、こんにちは。今日はここジャパリ陸上競技場からフレンズとスポーツの祭典、第一回ジャパリンピックの模様をお伝えします。解説としてジャパリンピック提唱者、かばんちゃんをお招きしております」
「あ、みなさん、こんにちは。かばんです。敗者になっても怒ってボクを食べたりしないでくださいね」
「はい、ありがとうございます。そして実況は私、ツチノコでお送り致します。さて、フィールドでは走り高跳びが行われています。バーの高さは五メートル。いきなり凄い高さです」
「棒高跳びと間違えそうですね」
「エントリーしているのはサーバル選手のみです。試技の回数は一回だけ。失敗すればそれで終わりです。さあ、サーバル選手、助走から勢いよく、跳んだ、飛んだ、余裕です。軽々とバーの上方へ舞い上がりました。驚くべきジャンプ力です」
「あれ、おかしいな。赤旗が上がっているけど……」
「ああ、なんということでしょう。サーバル選手、失格です。バーを飛び越えていません。跳ね上がった後、バーを越えずにその場に着地してしまったようです」
「みゃみゃっ! バーを飛び越えなきゃいけないなんて聞いてないよお!」
「サーバル選手、異議を申し立てていますがルールですので仕方ありません。さあ、気を取り直して今度は走り幅跳びです。これも助走から一気に踏み切り、跳んだあ、飛んだあ。砂場の端まで飛んで行ったー! 計測が終わって結果は……十メートル! 凄い記録が出ましたー! さすがサーバル選手!」
「三段跳びと間違えちゃいそうですね」
「あ、いや、待ってください。赤旗が上がっています。なんと、サーバル選手失格です。踏切板を越えてジャンプしてしまったようです」
「みゃみゃっ! 板の前から飛ばなきゃいけないなんて聞いてないよお!」
「サーバル選手、異議を申し立てていますがルールですので仕方ありません。あっ、ここでマラソンの情報が入ってきました。先頭で競技場を出て行ったスナネコ選手、競技場を出て数歩走ったところで『もう満足』と言ってリタイアした模様です」
「スナネコさんは熱しやすく冷めやすいですからね」
「さてトラックでは陸上競技の花、百メートル走が始まりました。チーター選手を始めとして俊足自慢のフレンズが揃っています。さあ、準備を終えて、レディ、ゴー! 各選手横一線のきれいなスタート。先頭はやはりチーター選手……おおっと、どうしたことでしょう。チーター選手、穴に落ちました。他の選手たちも次々と穴に落ちていきます」
「ほわあー、穴を掘るのはたのしーのでありますっ!」
「なんと、プレーリードッグだあ! 知らないうちにプレーリードッグがトラックに穴を掘りまくっていたようです」
「わわあー、誰か助けてくれなのでありますっ!」
「しかも自分の掘った穴に自分で落ちているぅ! 墓穴を掘るとはまさにこのこと。穴があったら入りたいくらいの恥ずかしさです」
「もう穴に入ってますけどね」
「いずれにしても競技続行は不可能。全選手リタイアです。またも記録なし、入賞者なしに終わってしまいました」
「何はともあれ誰もケガしなくて良かったですね」
「さあ、競技場ではサッカーが始まりました。ライオンチームとヘラジカチームの因縁の対決。これが今大会最後の種目となります。おっと、ここでマラソンの情報が入ってきました。なんと、最初の給水地点で出されたアルパカ特製アイスティーがあまりにも美味しかったため、全員リタイアしてお茶会を開いている模様です」
「アルパカさんのお茶を飲むと、まったりしたくなりますからね」
「これまでのところ参加した全選手が失格、もしくはリタイアしています。このサッカーは果たしてどうなるのでしょうか。全選手整列したところでトキが出てきました。試合前の大会歌独唱です」
「わたしは~、トキ~、ジャパリンピックは大盛況~」
「ううっ、いつも以上に強烈な破壊力。放送席のスタッフも耳を押さえています。あっ、なんということでしょう。選手たちが倒れていきます。どうやらトキの歌を聞いて失神している模様です」
「た、退場……」
「レッドカードだあ。主審の博士が倒れながらトキにレッドカードを突き付けました。無念の表情で退場するトキ。しかし時すでに遅し。全選手、気を失って倒れています。もはや試合続行は不可能! 第一回大会は一人のメダリストも出ることなく終わってしまいました」
「まあ、勝者も敗者もない平和な大会だったのですから、それはそれで良かったのではないでしょうか」
「はい。それでは閉会式の準備が整うまでCMをどうぞ」
CM
「閉会式が始まりました。お茶会を開いていたマラソン選手も戻り、穴に落ちたり気を失っていた選手も元気に入場してきます。競技場の真ん中には巨大なくす玉が用意されています」
「あっ、みんな一斉に玉を投げ始めましたね」
「はい。巨大くす玉の中にはサンドスターを配合した最高級ジャパリまんが詰め込まれていまして、玉を投げてくす玉を割ると、ジャパリまんが選手たちの頭上に降って来るのです」
「みんな、ジャパリまんを食べて疲れを癒して欲しいですね」
「さあ、くす玉には玉がボコボコ当てられています。割れそうです。間もなく割れそう、おっと割れました。中からはジャパリまんが……違います。出てきたのは大量のセルリアンですっ! なんということでしょう! 配合されているサンドスターを狙って、知らぬ間にセルリアンがくす玉の中に忍び込んでいた模様です!」
「こいつら許せねえ! 食い物の恨み思い知れ。野獣開放!」
「全選手、殺気を帯びた目を光らせながら、セルリアンに襲い掛かりました。あちこちからパッカーンの音が響いてきます。もう閉会式どころではありません。しっちゃかめっちゃかの大騒ぎです」
「賑やかな閉会式になりましたね」
「ああ、放送終了の時間が迫ってきました。競技場では大騒ぎが続いていますが、そろそろお別れしたいと思います。解説のかばんちゃん、ありがとうございました」
「はい。第二回があったらまた呼んでください」
「実況は私、ツチノコでお送りしました。それではジャパリ陸上競技場からお別れします。さようなら」
ジャパリンピック2017 沢田和早 @123456789
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
最初の酒の失敗談/沢田和早
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます