かえってきたペパプ予告ダッシュレインボー

@escargot423

予習第一話 ネジツノレイヨウ

 巨大セルリアン撃退を祝う会場として使用されたジャパリパーク内のゆうえんち。

 その中央付近にあるまっさらに改修されたステージ上に、5つの人影があった。誰もいない客席の中央には事前に設置しておいた撮影用のラッキービーストが鎮座している。


「原点回帰でまずは自己紹介から! 私はロイヤルペンギンのプリンセス!」

「コウテイペンギンのコウテイだ。リーダーをやらせてもらっている」

「イワトビペンギンのイワビーだぜっ! 覚えてくれよな!」

「ジェンツーペンギンのジェーンと申します。よろしくお願いいたします」


「……えっと、フンボルトペンギン。ふるるー」

「『です』くらい付けなさいよ!」

「デスふるるー」

「ボスキャラみたいになってるじゃねーかっ!」


 イワビーがフルルーを軽くはたき、それで静かになったのを見計らってコウテイが続けた。


「いくぞ、5人揃って――」「「PPPペパプ!」」

「そして始まるのが――」「「PPPペパプ予告!」」 

「よし、ちゃんと言えたわね!」


 本来なら決めポーズも欲しいところだが、ペンギンゆえ駆け足などすれば転んでしまうということでカメラ目線のまま肩だけ組み、あまり待たせぬようすぐ離れる。

 今回のスタート担当はジェーンだ。


「今週はクーズーについて予習いたしましょう。ネジツノレイヨウとも呼ばれているようですね」

「クーズー、クーズー……罵られたいどえむなのかな」

「さすがにそれは違うんじゃねーか?」

「そうだな。まずは外見を皆で見てみよう。マーゲイ頼む」


 コウテイが舞台脇に手を振り、マネージャーであるマーゲイがクーズーの実物大パネルをゆっくりと運んでくる。フレンズではなく動物の写真なため、ツノを含めずともその威容は皆の身長の1.5倍近くあった。

 イワビーが感嘆の声をあげる。


「すっげーツノしてんなークーズーって。二周くらいねじってあってカッコイイじゃん」

「サバンナでは結構メジャーな草食動物で、ジンバブエって国の国章にも使われているのよ。すごいわね!」

「ナミビアのオリックス、ボツワナのシマウマ、ガボンのクロヒョウとアフリカ大陸では動物入りの国章はよくあるみたいですね」

「西欧でも猛禽類やファンタジックな竜種を使う国はあるが、やはりアフリカのほうが自然感がよく出ているな。自分の国の国章が気になるようならパスポートのデザインを見るといい。例外もあるがだいたいは表面に描かれているのが国章だ」

「ジャパリパークの年間パスポートは『の』だったよねー。もぐもぐ」

「一応言っとくけど、ジャパリパークは国じゃあないわよフルルー?」


 気がつくとまたジャパリまんを食べているフルルーに呆れながら突っ込むプリンセス。

 そこへイワビーが思い付きを深く考えずに口にした。


「だったら南極が国家になったらペンギンの国章になりそーだな!」

「つまりわたしが建国すればいい。やってみるか。帝国になっちゃうけど別にいいよね」


 コウテイの爆弾発言で、メンバーに激震が走った。


「ちょ、どんな生き方してたら国を興そうなんて発想になるのよっ!」

「名は体を表すとはこういうことなんでしょうか? けど帝国って……」

「でもアイドルのほうが楽しくない? 行っちゃダメだよ~リーダー」

「コウテイが皇帝かよ……ぷっ」


 混乱するPPPの中で、フルルーがまっさきにコウテイを引き止めた。焦る他の面々を見てコウテイもやらかしたと気付き言葉を選びながら発言する。


「フルルー……そうだな。まだアイドルに必須と言われている演奏も満足にこなせずにいる私だ。まずはあのギターを弾けるようになって、それから三代目PPPを押しも押されぬスターアイドルに導いて、それでもまだ余生があり余っているようなら南極を乗っ取ろう……かな」

「なんだよそういうことか。驚かすなよなーリーダー」

「あーびっくりした。リーダーは冗談言っても表情だけじゃわからないからリアクションに困るのよねほんと」

 

 イワビーとプリンセスが安堵のため息を吐く。


「わたしもあのキーボードという楽器は苦手ですね。あれってフリッパー(=翼)でうまく押せるようにできてないんですもの」

「ふるるーはドラムできたよ! えっへん」


 オオコノハズク博士が少し前に初代PPPたちの使っていたといわれるものと同じ種類の楽器(ギター・ベース・ドラム・キーボード)を四人に譲ってくれたものの、彼女たちはまだキタキツネやフェネックらのように「フレンズの毛皮は脱ぐことができる」と知らないため、フリッパーで楽器を演奏しようと四苦八苦していた。

 つまり現状のコウテイとイワビーは、ミトングローブで弦楽器を弾こうとしているようなものだったりする。うまくいくわけがない。


「よし! じゃあこの次回予告を言い終わったら楽器の練習に移りましょうか。締めもジェーン頼むわよっ!」


 なおプリンセスはマイクしかもらえなかった。初代にいないから継承できるものがないとはいえひどい仕打ちであるが、本人もメンバーも気にしていない。


「次回『闘技場コロッセオ』」

 

 楽しくアイドル活動ができて5人がいつもいっしょにいられればわりとそれで満足なのだ。

 今日もPPPペパプは鳥頭であった。

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