ザ・グレート・オブ・お嬢さま
泡沫恋歌
〔 お嬢さまの取扱説明書 〕①
「お嬢さま、おはようございます」
朝の挨拶と共に、いつものように執事の
「あん、もう少し眠らせてちょうだい」
「なりません、お嬢さま。今日は午後から大事なお茶会がございます」
「後、三十分だけ眠らせて……」
「さあ、ブレックファーストの用意が整っております。冷めない内にどうぞ召し上がれ」
爺やの石頭、全然融通が利かないんだから!
わたくしは仕方なく、
今朝はサンルームのテーブルにブレックファーストが
ここは温室になっていて、一年中蘭や薔薇が咲いていますの、そこから眺める広いお庭は青々とした芝生と美しい季節の花々が咲き乱れておりますわ。
だけど、こんな風景もの毎日見ていたら感動なんてありません――。
いつの間にか、足元にマンチカンのシャナが摺り寄ってきて朝の挨拶をします。まあ、なんて可愛い子なんでしょう。わたくし猫が大好き。だって、いつも自由なんですもの。それに比べてわたくしの日常なんて、
嗚呼、お嬢さまって本当は苦労が多いんですのよ!
わたくし、
「――では、執事の黒鐘がご説明いたします。そもそも
「黒鐘! もういいわ。そんな長い説明聴いていたら……わたくしまた眠くなりそう」
我が蟻巣川家は皇族の親戚筋の華族ですので元侯爵家でございますわ。そう、だから皆さま、わたくしのことを『ザ・グレート・オブ・お嬢さま』って呼ぶんですのよ。おほほっ
「失礼いたしました。ではメイドに料理を運ばせましょう」
執事がチリンとベルを鳴らした。すると、三人のメイドがブレックファーストを運んで参ります。
トリュフ入りのオムレツ、キャビアの乗ったサラダ、ブルガリアから空輸したヨーグルト、そして本場フランスのパン職人が焼いたクロワッサンなど――。
バカラのグラスに注がれたフレッシュジュースをひと口飲んで、テーブルに並べられた料理をひと目見るなり、わたくしフンと鼻を鳴らしましたわ。
「要らないわ、全部下げてちょうだい」
「お嬢さま、朝食抜きはお身体に悪うございます。どうか、お召し上がりください」
「要りません」
「そんなことをおっしゃらずに……どうか……」
「食べたくない!」
わたくしが強くそういうと、黒鐘は困った顔でパンパンと手を打って、メイドに別のものを持って来させました。
そして、しずしずとマイセンのお皿に乗って運ばれてきたモノは、そう、わたしくの機嫌が悪い時に出される、アレですわ!
『焼きいも』
甘く美味しそうな匂いがお皿から漂ってきて、わたくしのお腹は「グゥー」と反応します。口の中には
夢中で焼きいもの皮を剥くと大口をあけて、パクリとかぶりついた。
「トレビアン! 世の中に焼きいもほど美味しいモノはございませんわ」
わたくし焼きいもを目の前にすると、名家の令嬢のプライドも気品もなくしてしまうの。そんな、わたくしの様子を執事の黒鐘が
どんな一流のパティシエの作るスイーツよりも、焼きいもは最高ですわ! おほほっ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます