みんな青魔法を忘れてませんか?

@yso0911

第1話 青魔法って食えるのか?

新生歴980年4月30日

パルミラ王国諜報部主席諜報員ラグクラフトが王国東部辺境地帯の行商人ビットから聞き出した話を自動書記によりそのまま記す。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


信じられねー。


説明しても理解されないなんてことは俺にだってわかるよ。

ついにいかれちまったって思われても仕方ねー。そんな話だ。


あんたは信じてくれるんだろ?


まぁいい、金さえもらえりゃいいさ。


あー俺はいつも通り行商のために馬車を駆りながら家路に急いでいた。

最近はここらも魔獣やら野盗やらが出るようになっちまった。

だから日が落ちるまでになんとか町につきたかったんだ。


どこの町かって?

ここらで町っていったらイスタリアくらいしかねーな。他の町はもうなー。


てなわけで俺は急いでた。

商売もそろそろ変えたほうがいいかなとか思って馬車を急がせていたんだがそれが不味かった。

緑色の塊が道にあるのに気づかずに轢いちまったんだ。


俺はすぐにわかったね。

やっちまったよ。

グリーンゴブリンだなってね。


グリーンゴブリンなんざ、冒険者連中にとっちゃとるに足らない相手なんだってよ。


酒場で聞いた話だけどグリーンゴブリンは数だけの雑魚らしいじゃねーか。知ってたら蹴散らしてやってたぜ。


その時はよくわからなかったし、俺はただの行商人だし、季節も悪い。

まぁ当時は春になったばかりめ、ゴブリン達は繁殖期を迎えて気がたっていたんだよ。


正確な日時?

あーだいたい3月20だか30だかその辺だよ。

へへ、アルコールがもうちょいあると口も頭もよく回るんだがなー。


おいおい、いいのかよ。

ここで一番の酒だぜ。

豪勢なこったな。

そうだな、あれは3月27日だな。

うん、間違いねー。


じゃ話を進めるぜ。

んでたちまち俺たちを追いかけるグリーンゴブリン共と追いかけっこの始まりさね。


自分で言うのもなんだが俺は馬車の運転はかなり得意なんだぜ。

まぁ捕まっちまったけどな。

あれは俺じゃなくて馬のせいだ。

あーもっといい馬が欲しいぜ。


俺は近くの石とかを投げて応戦したんだが如何せん数だけは多いあいつらには勝てなかったんだ。

いやーあの時は死ぬかと思ったぜ。


だけどよ。

この通りよ。

ちゃあんと生きてるぜ。

アンデットなんかじゃあねーぜ。

ちゃんと酒飲んでるしな、がははは。


ふー、まぁ睨むなよ。

ここからがいいとこなんだからよぉ。


捕まった俺は木に縛られて運ばれてったわけ。馬はなんとか逃げたみたいだわな。

ご主人様を置いて逃げるなんざ、あの駄馬は今度あったら馬刺しにしてやらぁ。


んでよ。

運ばれた先は丘をくり抜いたような洞窟だったわけ。


いやーまいったね。

いつも行商で通ってる道の近くにこんな巣を作っちまうなんてよ。

感心すると同時に驚いたぜー。

魔獣ってやつの繁殖力ってやつにさ。


巣の中はグリーンゴブリンで溢れてたよ。

そういやぁあいつらの交尾を見たことあるかい?

ありゃあ一度見たら忘れられねーわな。

わかった、わかったよ。

この話はなしにするよ。


んで俺はどうやら本日のメインディッシュらしくえらく太った立派なグリーンゴブリンの前に引き出されたんだよ。


ん?あーえらく恰幅が良くてデカかったよ。

グリーンゴブリンを鷲掴みにして丸ごと飲み込めるくらいにはデカかったな。


マジか。

あいつがゴブリンキングなのかよ!

こりゃ自慢できるな。

俺はゴブリンキングから逃げ帰った男だぞってな。はははは。


はい、はい。

続きを話すよ。

少しはノッてくれてもいいじゃねーか。


んでこれから丸呑みにされるってところで後ろから声がしたんだよ。

うちの娘位の声だったからまだ13位じゃあねーかな。


『おじさん食べられちゃうの?』ってな。

だから俺は大声で叫んだんだよ。


助けてくれ!ってさ。

そしたら『目をつぶって』て言われたんだ。

もちろん目をつぶったさ。


目をつぶった途端だよ。

周りからゴブリンの叫び声があがったのはよ。

もうおっかなくて頭抱えて目をつぶるしかなかったぜ。

正直いうとちびっちまってな。

はははは。


で『あけていいよ』って声がして周りを見渡すと一面ゴブリンの石像があったんだよ。

俺の正面にもドデカイ石像があってビックリしたよ。


あん?じゃがん?

よくわかんねーが助かったからよ。

ありがとうって叫んだんだ。


したらよ、何もない所からちっせぇ女の子が現れたんだよ。


『別に、暇だから助けてみただけ』だってさ。がはははは。

暇だから助けられちまったよ。


とにかくありがとうって伝えてよ。

どうやってこいつら倒したんだって聞いたら『じっちゃんから教わった青魔法』って言うんだ。

がははは。

青魔法だってよ。

あんた知ってるか?

黒や赤や白とかじゃねーぜ。

いや笑えたよ。


あん?青だよ。確かに青って言ったけどどうかしたのか。

どうせ黒魔法の間違いだろ?


聞いたこと無いから言ってやったよ。

青魔法?それって食えるのか?ってな。


傑作だろ?

あの少女も笑ってたよ。

『食えないよ』だとよ。


そう言ったら気付くと居なくなってたんだ。

不思議な話だろ?

んでゴブリンの石像とかを売っ払って俺は豪勢な生活な訳よ。


まぁ聞けよ。

俺のこれからの野望をよ。

とりあえず今の金をもとにだなー。

おい。

これからが本番だぞ。


おーい。

戻ってこいやぁ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


信じられない。

青魔法だと?

とっくのとうに滅んだはずじゃ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る