ホラー探偵ギロギロの謎

けものフレンズ大好き

ホラー探偵ギロギロの謎

 あの日以来、ずっとオオカミちゃんの側にいてホラー探偵ギロギロの新作を待ち続けているキリンちゃん。

 最低でも一日一回は聞かされる「先生新作はまだですか!?」の声。

 さすがにオオカミちゃんもウンザリしてきて……。


「先生新作はまだですか!?」

「あのさ、キリン。何度言うけど漫画って言うのはそう簡単にぽんぽん出来る物じゃないんだ。むしろ毎日その言葉を聞かされて、やる気と集中力が落ちてきたかというか」

「じゃ、じゃあ言い方変えますね!」

「そういう問題じゃないんだけど……」


 オオカミちゃんはため息を吐きます。

 これ以上普通に言っても、まともに話を聞くようには思えません。

(こうなったら……)

 オオカミちゃんの目が怪しく光ります。


「実はホラー探偵ギロギロにはある謎を隠しているんだ」

「謎!?」

「それはジャパリパークのどこかにあるヒントを見つけたフレンズだけが分かる謎なんだ。今のところ誰もその謎を解いていないから、私としても張り合いがなくて……」

「だったらこの名探偵アミメキリンが解いて見せます! 待ってて下さい先生!」

「楽しみにしているよ」

 言うが早いか、キリンちゃんはロッジを出て行きます。

「また適当なこと言って。どうなっても知りませんよ」

「今の私にとってはこの静かな環境の方が大事なのさ」

 アリツカゲラちゃんの心配もどこ吹く風で、オオカミちゃんは執筆活動に戻ります。


 しかしこれが後々大きな問題を引きを越すことに……。


「博士!」

「なんです騒々しい」

「我々は食事中なのです」

「そんなことはどうでもいいの! ギロギロについて何かしらない!?」

「ギロギロ……タイリクオオカミの漫画のことですか?」

「まあなかなか面白いと評価してやるのです」

「そうじゃなくて――!」


 キリンちゃんはオオカミちゃんから聞いた話を伝えます。

 博士と助手はオオカミちゃんの性格からすぐにそれが嘘と見抜きましたが、

「聞いた事があるのです。なんでもさばくちほーの埋もれた遺跡に謎が隠されているとか」

「おさを敬う心を持つフレンズのみ開ける扉があるとか」

 面白そうだったので適当に話を盛ります。


「分かったわ!」


「……行ってしまったのです」

「ヒマだし様子を見に行くのです」


 そしてさばくちほー――。


「これが例の扉ね!」

「おおお、お前何者だ! キシャー!!!」

 目の前に現れたキリンちゃんに、あからさまに警戒するツチノコちゃん。

 ここはさばくちほーの地下迷宮、ツチノコちゃんは迷宮の奥で新たに見つけた扉を丁寧に調べているところでした。

「おまえ……確かアミメキリン? とか言ったな。こんな所に何の用だ?」

「気になります」

「当然のようにお前まで来るなあ!」

 ツチノコちゃんは知らぬ間に隣にいたスナネコちゃんに、反射的につっこみます。

 そんな2人に構わずキリンちゃんは、扉をいじくります。

 ただ、それがあまりに乱暴で、ツチノコちゃんは気が気ではありません。

「お、おま! 貴重な遺跡を壊す気かぁ! アイツといい生き方が大ざっぱすぎるぞ!」

「ここにギロギロの秘密が!」

「少しは人の話を聞けー!」

 メキリンちゃんはツチノコちゃんの抗議を一切無視し、扉を全力でばんばん叩きます。

 すると、今までうんともすんとも言わなかった扉が突然動き出します。

 皮肉にも、乱暴に扱ったことで中の分断されていた回線がいい感じで繋がり、機能が復活したのでした。


「やはり好きにさせておいて正解でしたね助手」

「面白いことになりましたね博士」

「お、お前らいたなら止めろよ!」

「あ、扉が全部開きました!……まんぞく」

 中を見ずに帰ってしまったスナネコちゃんを除き、その場にいた全員が扉の中へと注意を注ぎます。


「罠があるかもしれないな。ここは慎重……にぃ!?」

 ツチノコちゃんが止めるまもなく、キリンちゃんはずかずかと入っていきます。

「あれに何を言っても無駄なのです」

「いい加減学習するのです。我々は賢いのでもう扱いをマスターしたのです」

「賢いので」

「ぐぬぬぬ……」


「……これは!」


 後ろで騒ぐ3人をよそに、中に入ったキリンちゃんはついにそれを見つけました。


 そして時間は進みロッジアリツカ――。


「先生! 謎は解きましたよ!」

「え?」

 自分のついた嘘などすっかり忘れていたオオカミちゃんは呆然とします。

 そんなオオカミちゃんに構わず、キリンちゃんは持っていた物を見せます。

「これです! この本にギロギロが載っていました!」

『えええええ!?』

 これには一緒にいたアリツカゲラちゃんも驚きます。


 実はキリンちゃんが開いた扉の先は、かつての従業員休憩所で、そこには読み捨てられた漫画雑誌があったのです。

 としょかんにはそういう本は一冊もありません。

 そしてたまたま、ホラー探偵ギロギロとそっくりの漫画が雑誌に載っていました。


「つまりホラー探偵ギロギロは2代目だったのですね!」

「え、あ、いや……」

「それとこれは一緒にいた博士からの伝言です」

「嫌な予感がするよ……」


「『パクリはよくないのです』、だそうです!」


「やっぱりぃぃぃぃ! たまたま似てただけなのにー!」

「言わんこっちゃない……」

 アリツカゲラちゃんはため息を吐きます。


 やはり嘘はいけませんね。


                                  おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホラー探偵ギロギロの謎 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ