拙者、忍者パンサーカメレオンでござる!

@zatou_7

密偵は大変でござるの巻

-ザザザザザッ 

草むらに一陣の風が走る、草をかき分け真っ直ぐ低く走る風

否、それは風ではなかった、それはカメレオンだった

周囲の風景に溶け込み自身の身を隠すことのできるカメレオンの走りははたから見れば風が走るかの如く映る

 今日はヘラジカの命によりライオンの城に密偵に向かっていた

図書館で見た忍者の絵本、初めて見た時は忍者という物を認識はなかった

しかし、絵本に描かれた忍者の姿は字が読めずともカメレオンの心を強く打つ

自分も絵本の登場人物のようになりたいと思う気持ちが溢れ、博士に忍者について教えてもらったあの日、パンサーカメレオンは忍者になることを決意したのだった


ライオンの城に到着すると周囲に注意を配りながら門を開いた


「フッフッフ、誰も居ないでござるな、お邪魔しますでござるよ」


板張りの床をソロリソロリと壁伝いに進んでいく

ふすまの向こうに誰か居るかも・・・と敵陣の真っ只中でいつ誰かと遭遇してもおかしくないこの状況で自分があの絵本の忍者と同じなんだ、いま私はまさに忍者であるという自覚がいつもなら怖がって腰が抜けてしまうこのスリリングな場でカメレオンにいくばくかのエクスタシーを与える


(抜き足差し足忍び足・・・忍の動きは完璧でござる!ああ、拙者今、凄く忍っぽいでござる・・・)


ふすまに耳をあて気配がないのを確認してゆっくりとふすまを開けて奥へ奥へを歩をすすめていく

 10数メートル程行ったところでふすまの向こうに気配を察知した

(ひっ、誰かこっちにくるでござるな・・・)

カメレオンは息を殺して柱の影に身を潜めた


「あー腹へったぜぇ~」

「オーロックスあんた、あんなにじゃぱりまん食べてたのにもうお腹が空いたの?」

「減るものは仕方ねーだろ、ツキノワグマのやつ早くじゃぱりまんとってきてくれねーかなぁ・・・あー腹減った!」

「全く、それにしても大将、へラジカと二人きりで話ってなんの話だろうな」

「さあ?オレは腹ぺこでそんなのちっとも気にしてなかったぜ」

(なんと、ヘラジカ様がきてるのでござるか・・・拙者に密偵させたのになんできてるのでござるかヘラジカ様・・・)


オーロックスとオリックスが遠ざかったのを確認して更に奥へと進んだ

(ここがライオンの部屋でござるな、ん?なにやら話し声が・・・)

ふすまに耳当てて微かに聞こえる会話に集中した


「ヘラジカぁ~ん…ゴロゴロ」

「ハハハ!ライオンくすぐったいぞ!」


(むむむっ・・・なにやら様子が・・・中の様子が気になるでござるなぁ)


ふすまの向こうから聞こえる楽しげな声が気になり

静かにふすまを数センチだけ中の様子を伺ったカメレオン

ふすまの向こうには目を疑う光景があった

なんと、ヘラジカの膝の上でライオンが喉を鳴らしながらじゃれついていた


(あわわわわ・・・え、えらいものを見てしまったでござる・・・あっ!)


ガタッ


おどろいた拍子についふすまを開けていた手に力がかってしまいふすまが大きくあいてしまう


「誰だ!」

「ふぇぇぇええええええ!!!!!!!!しまったでござるぅぅぅ!!」

「か、カメレオン!!!」


ライオンのドスの利いた声を聞いたショックで擬態がとけてカメレオンの姿が白日の下にさらされた


「お、お、お前なんで・・・あっ!し、しまったそうだライオンの城に密偵をことづけて・・・うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「あわわわわわ・・・は、はじゅかしぃぃぃ!!うわああああああ!」

「へ、ヘラジカ様!ライオン殿!落ち着いて!拙者なにも見てない聞いてないでござる!」


顔を真赤にしてパニックになるヘラジカとライオン、今までにない身の危険を感じたカメレオンは・・・


「せ、拙者、拙者・・・これにて御免!でござる!ええい!忍法霧隠れ!」


ポンッ


懐から出した自作の煙玉(天然素材)をなげつけて透明になり城外へ飛び出した


「密偵がこれほど大変だったとは思わなかったでござる・・・忍びは辛いでござる、博士も言ってたでござる、忍び耐えるから忍耐と・・・拙者負けないでござる!」


パンサーカメレオン、彼女の忍道は思いのほか険しいものになったのだった

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