第11話

“カオリ…

カオリ…起きて…”

何があったか分からないまま、

病院のベッドで目を覚ました。

丸3日間昏睡状態だったらしい。

「あなた貧血で駅の階段から転がり落ちて頭を打ったのよ!」

寝ずに泊まり込みで看病してくれていた母が目を覚ました私に説明する。

「ずっとうなされてたから頭を打っておかしくなったんぢゃないかと心配したわよ!~

良かったわ、これで安心した。

ぢゃっ、お母さん一回家に帰るから何かあったら先生や看護師さんにちゃんと言うのよ?いい?

わかった?」と言い残して心配しながら母は帰っていった。


夢をみてた。

それは長い夢だった。


綺麗な景色の中、

きらびやかな着物を着た、

たくさんの人達。

「絶景じゃ~!絶景じゃ~!」

口々に騒ぐ楽しいパーティー。

あちこちから笑い声がきこえて美味しそうなお茶菓子や団子が並んでいる。

こちらを見つめてるのは私の愛しい人。

身分が違うこともあって許されない間柄なのか、

なかなか近付けない。

私達はそのパーティーを抜け出して誰にも見付からない所で寄り添いながら

桜の絶景を風に吹かれながら見てた。

大人の目を盗んでは城を頻繁に抜け出して私達はデートをして楽しんでいた。

そこに女官みたいなこわい人が現れて…

私達の関係は裂かれてしまった。

二度と会うな!とか、

会ったら相手を殺すと言われてしまった。

だから桜のパーティーなら会えると思って、心待ちにしてた。

皆が酔っぱらってイイ気分になった隙を狙って上手く脱け出すことが出来た。

楽しい微笑ましい時間は束の間で、

一部始終を見られてしまって…

追い詰められて逃げ場を失った私達は、

「許されないならば来世で一緒になります」と言い放ち、

指切りしながら崖から投身した。


私は抱き締められながら転落していく。

風に乗る桜の花の枚散る谷に私達は吸い込まれる様に落ちていった。

「大丈夫。

見付けるから心配するな…」という言葉と一緒に落ちていった。

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