第十九話「一人と二匹」

 いやー、大漁大漁!

 ホーンラビットの角、毛皮、肉。それに、マルチスライムの核、粘液。

 ゴブリン素材や、毒を掛けようとする蝶、パラライズバタフライの素材も集まってきたかな。

 あとは、悪戯エイプっていう猿の素材と麻痺させようとするパラライズバタフライの素材が少しってところか。


 今、俺は北エリアと東エリアの境界、北東を目指して進んでいる。

 ここら辺はエンカウント遭遇率が低く、北と東のエリアにいる敵モブがどっちも出てくるから今の俺には好都合な訳だ。

 ラピスとトパーズの装備のために、少し北寄りを歩いていることは否定出来ないがな。


 そして、もう一つの目的地である、ラピスとトパーズ、ついでに俺のレベルも上がった。


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 モンスター名:ラピス

 種族:マルチスライム(Lv.6)

 HP  800/800

 MP  35/35

 ATK  3

 VIT  9

 INT  2

 MIN 21 (used 6)

 DEX  1


 スキル

 《粘着》Lv.1

 《吸収》Lv.1

 《分裂》Lv.2

 《擬態》Lv.1

 《物理攻撃無効》Lv.☆

 《被魔法攻撃5倍加》Lv.☆

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 モンスター名:トパーズ

 種族:ホーンラビット(Lv.6)

 HP  750/750

 MP  20/20

 ATK  23 (used 6)

 VIT  5

 INT  2

 MIN 2

 DEX  6


 スキル

 《跳躍》Lv.2

 《気配察知》Lv.1

 《採取》Lv.1

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 プレイヤー名:テイク

 種族:ヒューマン

 ジョブ:テイマー(Lv.15)

 HP  1000/1000

 MP  804/2415 (used 24)

 ATK  10 (+5)

 VIT  10 (+2)

 INT  10

 MIN 10

 DEX  10 (+3)


 スキル

 《鞭》Lv.1

 《火魔法》Lv.1

 《水魔法》Lv.1

 《土魔法》Lv.1

 《風魔法》Lv.1

 《光魔法》Lv.1

 《闇魔法》Lv.1

 《HP自然回復》Lv.4

 《MP自然回復》Lv.1

 《即死回避》Lv.1

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 ラピスは今も大活躍中の《分裂》スキル、トパーズは既に俺の肩やギルドのカウンターまで飛び乗れる程の《跳躍》スキルを強化した。

 ご存知の通り、それ以外のスキルにはこれ以上振る気は無い。ラピスはどれだけ分裂して、トパーズはどこまで跳べるようになるのか見物みものだな。

 ちなみに、《分裂》Lv.2でラピスは四体に、《跳躍》Lv.2でトパーズは見上げる程に跳べるようになった。トパーズの跳躍力には、ATK筋力値が上がったことも関係してそうだな。


 俺? もちろん《HP自然回復》に振ったぞ。これで、五秒で80回復できるな!

 回復薬飲んだ方が早いとか言うなよ。

 だが、実はこれまで一度も攻撃を受けていない。平原で疎らに木が見えるだけなので、遠距離から撃ち放題なのだ。

 正直、ラピスもトパーズも戦闘面ではあまり役に立っていない。あと、《HP自然回復》もだな。

 トパーズには《気配察知》でサポートしてもらってるけど。


「さてと、お前らのレベルも上がったし、そろそろ帰るか」


 ラピスが俺の頭で揺れる。これは、肯定の揺れ方だな。お前、今回何もしてないけどなー。

 トパーズは上手いこと俺の肩に飛び乗ってきた。ATK筋力値が上がったってのに、なかなか力の加減が上手い奴だ。俺がATK筋力値極振りした時は、手の振りに体が流されたってのにな。

 しかも、トパーズの性格は戦いたがりなようだ。勝手にゴブリンに突撃した時は肝が冷えたぞ。何とか魔法が間に合ったが、それ以来ちょいとご機嫌ななめだ。

 獲物を横取りされたとか思ってんのかね。


 んで、帰るにしても北か東か、どっちから帰ろうか。


「なんか二人から案ある?」

『……』


 トパーズさんは、未だにご機嫌が麗しくないようで。

 ラピスはと言うと、ピョンと頭から飛び降りると近くの木までズリズリと移動し始めた。

 ラピスさんは、東の森から帰りたいんですかね?


「ん? なんだ? 木の棒と、草?」


 ラピスに着いて行って到着したところで、せっせこ何かを集めていたラピス。

 それを、俺に渡してきたんだが、なんだこれ?


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 クヌギの棒 素材アイテム


 クヌギの木の棒。

 単体では、何にも使えない。

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 ワタヌキ草 素材アイテム


 クヌギの木周辺に生える草。

 綿が取れる。

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「これ、素材アイテムなのか。そういや、繭に東の森で素材集めして来いって言われたんだっけな。やべ、完全に忘れてた。ありがとな、ラピス」


 木の棒と、綿らしきものが付いた草を受け取り、ラピスを撫でてやる。

 ラピスは初め驚いたようだったが、すぐに俺の手に寄り添い、手を離さないよう、自分の身体で固定しようと頑張り始めた。

 ほんと、可愛いやつだなー。……って、俺の手喰われてないか? 侵食されてねえか!?


「ら、ラピス、ストップ! ほら、素材集めに行くぞ」


 慌ててラピスに呼び掛ける。ダメージ食らってねえよな?

 当のラピスはと言うと、手を離してから少し雰囲気が沈んだ気がする。表面の張りが弱くなったり、地面に貼り付いてたりと、意外と分かりやすい。

 別に怒ってる訳じゃないんだけどな。


 ラピスを抱えて東の森へ向かう。頭に乗せるのはちょっと休憩。時々頭を軽くしないと、首が疲れるんだよ。


 東エリアに向かうため、南へと歩いていくと、当然だが木が増えてきた。ここはまだイワンの町から見て北東の方向だからマシなんだろうが、もっと東エリアの中心へ行くと完全に森になるはずだ。

 採取しながら森を通って帰ろうかな。


 ~~~~~~~~~~~~~~~

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 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 パラライズバタフライ Lv.7

 △△△△△△△△△△△△


 おお、レベル高いな。

 Lv.7の麻痺蝶は火球か風球の消費MP800で一発だが、今の俺のMP回復量は五秒で46回復。

 遭遇率は今のところ、平均1分10秒に一回のエンカウントなことを考えると出来るだけ消費は抑えたいんだが……。

 ま、俺だけで倒す必要なんてないから余計な計算だったな。


「トパーズ、行け! ラピスも、投げるぞ!」


 トパーズが角を向けて、跳ぶ。蝶は魔物らしく、馬鹿デカいし、ヒラヒラ飛んでいるから結構な確率で当たるんだが、時々外れることもある。

 今回は仰角十三度か、方向も上手い、いいコースに行ったな。麻痺蝶のHPが目に見えて減っていく。あと六割。


 ここで、俺が投げたラピスが蝶に近付くが……。あー、また外れたな。

 DEX器用さ初期値の俺はなかなかラピスを当てることは出来ないでいた。時々は当たるんだ、時々は。無駄じゃない、うん。


 そして、俺が外したタイミングで敵にスリップダメージ。これは、トパーズにくっ付いていた、分裂したラピスが蝶に貼り付いたからだ。

 トパーズの突撃が当たっても外れてもride onライドオントパーズのラピスはいいダメージソースになってくれる。

 優秀な仲間を持てて、俺は嬉しいよ。


「さてと、そろそろ魔法の出番ですかね」


 トパーズの突撃で四割、ラピスの侵食スピードからして魔法着弾までに一割は見込める。


「それなら、消費MPは200だ! 《風球》!」


 ラピスがはねに付着している事で動きが鈍っている蝶に魔法が当たり、地面へと落下した。

 どうやら、この蝶は闇球以外の魔法が当たると一度地面へと落ちてしまうらしい。その中でも火球と風球はよくダメージが通る。


「んで、トドメっと」


 落下した蝶は一定時間動けないので、安全に仕留めることができる。

 一割残ったHPはラピスがじわじわと倒してもいいんだが、せっかくなのでツタの鞭で叩く。お、素材ドロップしたな。


「トパーズ、いい角度で跳んだなー。命中率上がってきたんじゃねえか? ラピスも、乗り移るタイミング完璧だったぞ。あ、お前は投げたラピスか? 悪い、また外しちまった。怪我してないよな? 次は当てる……と、思う! すまんな、また頼むわ」


 はたから見ると、すげえシュールなんだろうけど、コミュニケーションは大事だ。うん。

 それに、返事は返って来ないが、雰囲気は伝わってくるから無意味でもない。

 トパーズは高レベル帯になってから突撃する機会が増えて上機嫌だし、ラピスも嬉しそうに戻ってくる。

 さっき投げた時、木にベシャッてたんだけど大丈夫なのか?


「ほら、ラピスこっち来い。《水種》」


 説明する機会がなかったんだが、初期魔法には二種類ある。って言っても攻撃は出来ない便利魔法だな。火を付けたりそよ風を起こしたり。今回のは、一定時間残り続ける水を出す魔法だ。消費MPは10。

 蝶と戦うと、ラピスが鱗粉まみれになるの、何とかなんねえかな。


「トパーズも突撃した時、鱗粉かかってねえか? 魔法の水はすぐ乾くし、お前も洗って……トパーズ? 何かあったか?」


 トパーズが何かを警戒している。《気配察知》スキル持ちのトパーズが警戒したってことは、敵か!?


「トパーズ! どの方向か分か」

『キキィッ!』

「っ!」


 左から鳴き声! 猿か!

 くそ、ダメだ。避けきれない! 左腕でガードを……。



 メキィ……



 あ……? メキってああぁぁぁっ!?


「いた、いだいいたいいだい! 腕が! 左手が! ぐ、う、ああぁぁぁあっ!」


 何で、こんな、痛い!? これ、ゲームだろ!? 痛覚設定おかしくないか!?


「左手! 俺の左腕! どうなってる!? これ、絶対ヤバいや、つ……?」


 あれ、普通だ。

 にぎにぎ。ぐーぱーぐーぱー。ピースでイェイ。


 いやいや、待て待て! あの痛みで左手無事なのはおかしいって! いや、良かったけど! 良かったけども!


 ラピスは心配そうに寄り添い、トパーズは猿に向かって威嚇をしている。

 そういえば、さっきの痛みも、もう無い。


「ありがとう、二人とも。もう大丈夫だ。心配かけた。しかし、今のは何だったんだ。まさか……」


 恐る恐る、自分の簡易ステータスを見てみる。


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 プレイヤー名:テイク

 種族:ヒューマン

 ジョブ:テイマー(Lv.15)

 HP  385/1000

 MP  1026/2415

 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


 マジか。

 VIT生命力初期値、不意打ち、恐らくクリティカル、その上……。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 悪戯エイプ Lv.11

 △△△△△△△△△△△△


 やっぱ、レベル高いやつか。てか、第2エリアの最高レベルじゃねえか。

 色々一気に重なって六割強持ってかれたってことか。HPの減り幅で痛覚が決まるったって、シャレにならん痛さだぞ、アレ。

 ……六割であの痛みか。《即死回避》発動したらどうなるんだ。いや、今は考えないでおこう。

 それに、まずは、この状況だ。


 周りの木から何匹もの猿が顔を出す。くそ、俺の叫び声を聞いて集まって来たってとこか。

 ダメージ食らったってことは《即死回避》も当てにならない。


 これは、初の死に戻りですかね。

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