こい

長田茜

第1話

今俺が神龍を呼べたら真っ先に願うだろう。「超絶イケメンのインテリ系モデル体型美男子にして下さい」と。



あーーーーーモテてぇーーー…刹那にモテてぇ… いや、しっかりしろ真白光輝。 お前はモテないんじゃない。周りが俺についてきていないだけさ、と言い聞かせる。


先生「真白ォ!オメェ今ぼーっとしてたろ!ここ!③番解いてみろ!」


真白「モテたいです!」


先生「おぉ…?」


教室中が大爆笑の渦に包まれる。それと同時に自分が犯した失態に気づいた。いよいよ声に出てしまった…


真白「あー…-√3っすか?」


先生「お前…今は歴史の授業だぞ…!? 精神が危ない…?」


真白「あー!そうかもしれませんねぇ!保健室に行かせていただきまぁすゥ!」


先生「あとお前な!そんなんじゃ一生もてんぞー!」


あーー!心に突き刺さる!あんなメガネでも妻がいる。イコール「リア充」。なるほどなるほど、つまりアイツも俺を苦しめるのか。


ガラガラと保健室のドアを開ける。


先生「あらましろくん!またサボりかしら?」


真白「田井中先生ぇ〜!あのメガネがオレの事イジメるー!」


田井中先生。保健室の女神にして、心のヒロイン。正直大好きだ。


田井中「コラ、そんなひどいこと言っちゃダメでしょ?山本先生ダンディーで顔はいいじゃない?しょうがないわね、ちゃんと4時間目にはクラス行くのよ?」


確かにあのメガネは竹野内豊に似てると女子の間で人気だが、けしからんし大っ嫌いだ!!


真白「ほんじゃ、寝させていただきやーっす 」


田井中「しょうがない子ね…?真白くん……ベッドに横になって…?」


おいおいおい。田井中先生の瞳で俺の心はリミットブレイク&トレビアン。

来たか?俺の春来たのか?


真白「は、はい…」


素直に横になる。あ、やべえ幸せ。

こうして愛というものは…


田井中「そのままうつ伏せになって…」


真白「はーい♡」 まずは前戯からという事なのか…


田井中「じゃ、さよなら♡」


真白「はーい♡……え?」


ブスリ。 首筋に針が突き刺さり、何かが注入されていく感覚。


真白「ガッ…何を…!?」


田井中「おやすみ、被検体No.02♡」


そして、記憶はそこで途切れた。





恋って言うから愛に来た。



ヒンヤリとした空気に襲われ、目を覚ました。

窓から見える風景から、夜の9時…くらいだろう。保健室にはとけいがない。

真白「あれー?俺イチャイチャしてて…」


そうだ!愛しのマイハニー田井中先生!先生はもう帰ってしまったのだろうか…

真白「ったく…俺の夜はこれからだってのになぁ…サブっ…帰ろ」


バッグを掴み保健室から出る。しかし不思議だ。田井中先生とベッドに横になったのは覚えているのに、そこから先の展開が思い出せない。


家への帰路の途中、やけにカップルが多く目に付く。なんでだ?


真白「あー…今日イブか…」


彼女がいたら、ひとり寂しく歩くことも無いんだろうなー、なんて思いながら歩くとますますブロークンハートだ。 前からまた1組カップルが歩いてくる。手なんぞ繋ぎおってけしからぬわ。 イライラはMAXに達した。


ふと、声に出してしまった。


真白「ッチ…リア充『爆発しろ』よ」


ドガン!


後ろから眩い光が刺し、轟音が轟いた。


女「イ、イヤァァァア!!」

耳をつんざくような女の悲鳴。


女「か、彼氏が…彼氏がぁぁ!!!」


周りの人がドタドタと走りよって来る。大丈夫ですか!救急車を!様々な声が飛び交う。



振り返れなかった。足が棒になるとはこのことなのだと悟った。震えが、止まらない。


ドサリ


目の前に何か落ちた。人の腕、の様なもの。


真白「ヒィ…うァァア!!」


走り出した。信じたくなかった。受け入れられなかった。


直前に言った言葉。リア充爆発しろよ。 爆発しろよ。 『爆発』


そのキーワードだけが頭の中を駆け巡る。


夢だと思いたくて、家にたどり着いた瞬間ベッドに潜り込んだ。悪い夢から覚めろと願いながら。眠れない夢を見るような矛盾を抱えながら。

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