わたしの運命と悪魔

サムズアップ・ピース

Vol.1 わたしの運命と悪魔

night game Chapter1

 始めに、俺の目の前には闇があった。

 眩しい様な、暗い様な、何時いつから続いていたのか判然としない闇。

 瞼を開けると、俺はそこに立っていた。


 キョロキョロと周りを見回し、周りの景色を何と無く眺めるのは、俺の昔からの癖だ。

 出鱈目な方向に何本もの矢印が引かれた、地平線までアスファルト一色の大地。

 そこにバオバブの森の様にニョキニョキとそびえ立つ、ビルに似た銀白色の柱。

 そこから頭上に目をやると、夜の空には縦横に等間隔で線が引かれており、その間で(1、8)とか(19、13)と云った座標軸の付いた星々が、昔学校で習ったなんとか不等式のグラフだの、なんたら解離曲線だのを思い出させる星座を描いていた。


 結論、俺は今の自分の状況が全く分からなかった。ここは一体何処なのか。ここは一体何なのか。 

 このだだっ広い、暗くて寒い世界で、俺は頼るものも無く、独りぼっちの迷子だった。

 

 否応無しに孤独を認識させられ、急に寂しくなって来て、何だか泣きたくなって来て、俺は遠くの方にある、小高い丘に目を向ける。


(…………………嘘だろ、おい)

 その上に立っている、「きみ」に視線で縋り付く。


 風になびく髪、真っ赤な口紅、そして強い眼差しは、遠くからでも目が合っているのがはっきり分かる。

 目は口程に物を言うという言葉にある通り、強い眼差しは言葉を発する。

 ごちゃ混ぜになったメッセージが、俺と「きみ」の視線を通じて脳内に流れ込んで来る。


ぞえねゃじんてっなにきいい つかまえてごらん ようこいにょしっい ろえき めとすいごえ よいいてっよた ろだそく つかまえてごらん しなでくろ よだぶうょじいだ しろごとひ はえまおよだんなかば つかまえてごらん ねでいなしりむ つかまえてごらん つかまえてごらん えまじんし つかまえてごらん。


「…………待って下さい」


 不意に、「きみ」はそっぽを向いて、歩き出してしまおうとする。

 目を離す寸前に、最後のメッセージを残して。

 わいな うろやそく てっばんが おにごっこのはじまりだ がずく おにごっこのはじまりだ。


「…………待って下さい。置いて行かないで下さい………」


 遠い遠い「きみ」に向かって、夜の街に俺は駆け出す。鬼ごっこの鬼は駆け出す。

 昔の様にしてくれなくて良い、せめてどういう事なのか、説明してはくれないか。

 この世界はまるで、「きみ」の作った、


 「サブリナ」そっくりじゃないか。 


 



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