拡散メリー
星野フレム
二村薫の場合
皆さんは、メリーさんという都市伝説をご存知でしょうか?
メリーさんの都市伝説での一連からまとめた、メリーさんと言う存在について。
ある家族が町に引っ越しをしてきた。家族構成は父、母、娘の三人。
引っ越しの荷解きが済んで、母親が女の子に言いました。
「新しいお人形を買ってあげるから、古い人形は捨てましょうね」
と言って、古い人形を捨ててしまった。
その古い人形は、女の子が唯一大事にしていた人形だった。
大体の話では、母親が女の子のいない時間にその人形を捨てたという状況が多い。
すると、ほとんどのメリーさんでの話では、その捨てられた人形がメリーさんというのが一般的なもの。
そして、女の子がメリーさんを捨てられ悲しんでいた時期が流れ、まだそのメリーさんのことを考えていると、一本の電話がかかってくる。
そこで、例のセリフ。
「わたしメリーさん」
という内容とセリフが出て来ます。その後の惨劇などは、皆さんの知っての通り。
本作のメリーさんは、少しだけ変わった話となります。
ある日、一人の会社員である女性は、昔懐かしい夢を観ていた。
まだずっと子供だった時代の話。そして、最後に可愛らしい人形が出てきて、声が聞こえた。
「わたしメリーさん」
その後、歪んでいくその人形の顔は、憎悪の顔に変わりその会社員の首を締める。
「!」
少し汗ばむ額に手を当て、またあの夢かと思うこの女性の名は、二村薫という。
「夢、か……」
首を締められた感覚が残っている。そう錯覚している。そんなことはよくわかっている。
「もう何度目なの……」
はぁ……と息を吐き、考えをリセットする。
「さあ、会社会社!」
二村はまだ新入社員。人手不足の会社に採用され、ただ働くだけのしがないOLで、まだ引っ越してきたばかりの新生活社会人。
いつものように業務に苦心していると、二村はスマホを開いて必死に自分の案件で同じケースがないかを検索していた。
上司に聞けばいいだろうという考えはその時全く無かった。そんな彼女の行動が、たまたま表示していたSNSでの自分の一言を読んだ。
ただそれだけだった。
▼わたしメリーさん。今あなたの後ろにいるの。
その一言はつい先程投稿されていたものだった。
一瞬考えることができなかった二村は、その投稿を消そうとする。一言を共有できるSNSだということを思い出し、その一言を早く消そうとする。
スマホの画面からポップアップされたそれは、次第に他のSNSでの繋がりにまで広まってしまう。
▼おいおい、都市伝説だよw▽引用▽わたしメリーさん。今あなたの後ろにいるの。
その引用がSNSの仲間に一瞬にして広がった。二村は何度も消そうとした。しかし、スマホが壊れているのか、何故か何度同じ操作をしても消えなかった。
「ちょっと!」
汗ばみながらスマホと格闘中の二村を先輩会社員の男性が注意する。
「二村さん、会社でスマホは駄目って言われてないけど、業務時間中はしないようにって――」
声をかけられた二村は真っ青な顔をして自分を観ていた。
「二村さん?」
二村は悲鳴を上げてスマホを投げてそこから逃げた。
「おい、ちょっと!」
彼女の異常な行動にどうしたのかと思い、何気にスマホの画面を観た。
▼わたしメリーさん。今あなたの前で笑ってるの。
二村には、先輩の顔が自分の捨てた人形に見えていた。そして、それは笑っていた。
「見つけた」
その言葉に驚き、二村は先輩会社員だと確認して、先程の事態を説明する。
「そうなんだ」
目の前にいるのは、確かに先輩会社員だ。二村の顔は歪む。そして泣き出す。
「許して……! 許してよ! メリー!」
目の前にいたのは、先輩会社員。しかし、二村に見えているのは、首の取れかかった明るい色のした人形の顔。
「どうした!? おい! 二村さん!?」
白昼、二村は白目を向いて倒れ込み、意識がなくなった。
「ずっといっしょ」
その声が聴こえて、先輩社員は振り返る。
「……」
何もいない。しかし――
「二村さん?」
二村の姿は、振り返った時には影さえなかったという。
この手の話って知っていますか?
SNSが普及し、ネットが通じる時代にこんなことが起きる。
そして、こんな話があるわけがないと思って笑っているあなた。
お忘れの人形、大事な人形。その宝物は、あなたのそばに、必ず戻ってくるでしょう。
たとえ、どんな形でも。
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