ナルコレプシーの涙
脚本家目指してます
第1話出会い
くしゃくしゃになったハイライトを一つ一つまるで目覚まし時計を手探りで探すように布団から腕を伸ばし弄る
自分たちが何も入ってないと主張するがごとく潰れたハイライトを右手でさらに潰し確認する。
あきらめて身体を起こす、よく見ると一つふくらみのある箱があった。優しく握り確認する。
タブレット端末から全く流行ってない音楽を流しタバコを吸い始めた。このタブレットはイヤフォン端子が馬鹿になっていてイヤフォンを指しても右からしか音楽が流れない。
最初は自分の部屋で音楽を流すことに抵抗があったが大学を出てフリーターになってからは色々なことに鈍感になってきた。
適当に準備をすましてバイト先の喫茶店に向かう。
この喫茶は奥さんとバイトの俺との二人でやっていて、駅から少し離れの大通りから狭い路地を通った場所にあり人もあまり来ない。せいぜい来るのは近所のご老体方と営業をサボるサラリーマンぐらいだ。そこがとても気に入っているバイトをしてる理由だろう。
「おはようございます。」
「とうじくん、おはよう、今日もありがとね、」
ここはいつも温い夏でも冬でも快適より少しだけ温い、絨毯のせいだろうか。
「とうじくんごめん!今日もいいかな?」
またかコイツ・・・・
「・・・いいですよ、給与は貰ってるんでね、夕方の忙しい時間までには帰ってきてくださいね。」
うちの店には三席のテーブルがあり、奥まった一席だけバスケットいっぱいに花を誂え飾っている、奥さん曰く中央じゃなく奥の席に花を飾っているのがオシャレだとか。
その花を繕う趣味が高じ店をちょくちょくサボるようになった。一回俺がいなくなったらどうするんだと怒ったこともあったが、いなくなってからじゃ出来ないと怒られた。世の中は理不尽だ。
10時に開店させるために何をすべきかを考える。掃除は奥さんがしてくれたのだろう、いつも奥さんには不満しかいわないが、別に経営者なのだからこんなのは俺にやらせればいいのにと思う、してくれるなら逆に仕込みをしてほしい。
お店を開けて30分もすれば3~4人のお客さんが来てくれる、今日は4人きてくれた。
不思議なことにこの店は一人のお客さんがほとんどだ。スタバすら行ったことがない俺は喫茶店のことがよくわからない。黒々とした壁や天井、鈍い赤色の絨毯。カウンターと合わせて20席ないこの空間はこれぐらいの人数が心地よいのは確かだと思うが、
お客さんにコーヒーとトーストのセットを出し終わり静かでゆっくりな時間が流れる。
お客がひと段落したのを確認し俺は公務員試験の参考書を開き頭に単語を刷り込む作業を始めた。
大学4年になって少し就活とやらをやってみたがそのくだらなさに嫌気がさし公務員になるという選択肢を採用した。しかし大学生活で全く頭を使わなかったつけが不合格という形で出てしまった。悔しいなんて感情は無く、納得したというのが一番近い気がする。
不意に5月の暖かい風が流れた。
顔を上げると素っとん狂な顔をしてる高校生の女の子が立っていた。
「先・・・・生?」
「・・・・え?」
嫌な胸騒ぎがする。誰だこの子は。
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