ハンターの意地と漫画家の意地

けものフレンズ大好き

ハンターの意地と漫画家の意地

 パークの平和のため、ハンター達は毎日色々なところでセルリアンと戦っています。

 彼らの活躍があるからフレンズ達も安心して過ごせるのです。

 そんな彼らもたまには休養も必要。

 そこでろっじアリツカに来たのですが……。


「ということでよろしく頼むよ」

「何がよろしくなんだ!」

 強引に話を進めようとするオオカミちゃんに、ヒグマちゃんは思わず突っ込みます。

「いや、だから折角ろっじに来たんだから、漫画のネタにハンターの仕事を取材させてもおうって」

「誰もやるとは言ってない!」


「まあまあヒグマさんも」


 キンシコウちゃんが宥めます。

「いいんじゃないですか。私達の仕事を知って貰えば、これからさらにやりやすくなりますよ」

「そうですよー」

 リカオンちゃんも賛成します。

「仕方ないなあ……」

 2人に言われて、ヒグマちゃんも渋々受け入れます。

 そしてオオカミちゃんの取材が始まりました。


「……ってわけだ」

「なるほど、あの時のセルリアンの次に砂漠で会ったセルリアンが強敵だったわけだね」

「そうですね。あの時も駄目かと思いました」

「むしろそのすぐ後にあれ以上のオーダーが入るなんて、思ってもみなかったですよ」

 取材は順調に進みます。

 オオカミちゃんも質問慣れしていて、和気藹々と時間は流れました。

 しかし、ここから取材は予想外の展開を迎えます……。


「た、大変です皆さん! ろっじの近くにセルリアンが!」


 掃除に出かけていたアリツカゲラちゃんが、血相を変えてとびこんできました。

「どうやら休ませてくれないようだな」

「行きましょう!」

「はい!」

「・・・・・・」

 駆け出す3人……に続くもう1人。

 

「こっちです!」

 アリツカゲラちゃんに言われた場所に行くと、森の開けたところで赤く、そこそこ大きなセルリアンが二本の触手を伸ばして暴れていました。

 幸いにも周りにフレンズはいません。

「キンシコウとリカオンは両端から触手の注意を削げ! 私は真ん中から叩く!」

「了解です!」

「オーダー受け付けました!」

 指示通り2人は動き、中央からヒグマちゃんが熊手を大上段に振り上げ攻撃します。

「しまっ――」

 しかしセルリアンの頭から新たにもう一本触手が生え、そのままヒグマちゃんに――。


「させない!」


 ――当たる前にオオカミちゃんの右腕が唸ります。


「助かった!」

 ヒグマちゃんはそのままの弱点の石を攻撃し、見事セルリアンを撃破しました。


「ふう……一時はどうなることかと思いましたよ~」

「ありがとうございます」

「いや、困ったときはお互い様さ」

「・・・・・・・」

 2人は感謝したのに、ヒグマちゃんだけは黙ったままでした。

 

「……なあ、お前ハンターになってみないか? 巨大セルリアンのときも思ってたけど、かなり強いだろ。それにセンスもあるし視野も広い」


 すこししてヒグマちゃん、突然オオカミちゃんをスカウトします。

 ただ、キンシコウちゃんもリカオンちゃんも驚きはしたものの、反対はしませんでした。

「確かにタイリクオオカミが来てくれたら心強いですね」

「私も楽できますよ」


「……光栄だが断らせてもらう」


 しかしオオカミちゃんは、すぐに断りました。

「君達がフレンズの安全のために日夜頑張っていることは尊敬に値する。けれど私も、フレンズの楽しみのために日々漫画を描いているんだ」

「でもたかが漫画だろ?」

 この言葉にオオカミちゃんが少しむすっとします。

「ただ安全でも何も楽しみのない人生はつまらないさ。それに漫画で危険な場所や、セルリアンについても教えることが出来る。漫画は君が思っている以上に万能だよ」

「うーん、でも……」

「これ以上は迷惑ですよ」

 諦めきれないヒグマちゃんを、キンシコウちゃんが止めます。

「これから楽になれると思ったんですけどねー」

「仕方ない、か。けど、お前はセルリアンに襲われても私達をわざわざ呼ぶなよ。自分で解決できるんだからな」

「いいや」

 オオカミちゃんは首を横に振ります。

「私の右腕は本来漫画を描くためにあるものだ。そっちの方は君達に任せるよ」

「は、調子の良い奴」

『あははははは』

 最後はみんなで笑い合いました。


「色々協力ありがとう。私の漫画は図書館にあるから、行く機会があったら是非読んで欲しい」

「ああ、そのうちな」

「それではまた」

「あー、なんかあんまり休んだ気がしませんでしたよ」

「またのご来店をお待ちしております」

 ひとしきり取材が済んだあと、ハンターの3人はオオカミちゃんとアリツカゲラちゃんに見送られ、また仕事へと戻っていきます。

 

 それからしばらくの時間が流れました。

 

 ハンターの3人がとしょかんに出現したセルリアンを倒した、その帰り道――。

「そういえばとしょかんにタイリクオオカミの漫画があるって言ってたな……」

「そういえばそうでしたね」

「あとは帰るだけですし、折角だから見に行きませんか?」

 リカオンちゃんの提案に2人は頷き、としょかんへと戻ります。

 博士から漫画の場所を聞き、少し緊張しながらページを開きました。


『ホラー探偵ギロギロVSらんぼう3人組

 

 ホラー探偵ギロギロの前に立ち塞がる3人の敵。乱暴者のグマグマに真面目のキンキンあとリカリカ。隙の無い攻撃にギロギロは追い詰められるも、グマグマのドジで形勢逆転! 見事3人を退治するのだった』


「……取材が活かされている気が全くしないのは、気のせいでしょうか」

「このドジしたグマグマって明らかに私のことだろ! あいつ根に持ってたな……」

「お二人は未だ良いですよ。私なんて一番質問答えたのに最初のページ以外登場してませんし……」


 どうやらオオカミちゃんの方が一枚上手だったようですね。


                                  おしまい

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ハンターの意地と漫画家の意地 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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