第17話

魔法使いの夜に鐘が鳴る。

大勢の人間を従えた魔法使いレイは敵軍の方へと向かって歩みを進めた。

敵軍は青い旗を振りかざし銃を持って行進を続ける。

「おい、相手の様子が見えるか」レイは部下に命令する。

「相手は一方向から攻めてくるようです」

「そんなはずがない。あの国はいつも裏があって四方からやってくる可能性だってある」

「今のところ後ろも横も一切軍隊の気配はありません」

戦争が始まる。

魔法使いと一国の戦いだった。

銃で攻めてくる軍隊に向けて、レイは赤い炎を腕から放出する。

瞬く間に敵軍は焼き尽くされた。

赤々とした炎がぎらぎらと辺りを焼き尽くし、その光景はまさに地獄絵図で敵軍の兵士が一瞬にして黒ずんでいく。

相手の軍はレイの恐ろしさをまざまざと思い知る。

軍がひるんだところへ敵の後方に回り込んだ味方の兵士が敵軍に向けて襲い掛かる。

レイは相変わらず腕から出した炎で敵軍を焼き尽くしていく。

弾丸が辺りに散乱する。

レイは盾に隠れながら交戦する。

まさかレイ自身もこんな風に戦士になるとは思いもよらなかった。

心の中には常に道徳心が植え付けられていたのだ。

敵軍が襲ってくる。

そしてレイは奴らを凄まじい威力の炎で焼き尽くす。

死が怖いかと言われればそうだ。

だが戦いの高揚感と自らの宿命にはかなわなかった。

味方の兵士たちも恐怖を通り越して戦闘状態にあった。

レイは銃弾を避けながら時折身の危険を犠牲にして魔法を発動した。

銃弾が頬をかすめた。

「さぁ、もうじき俺のすべてを見せるときだ……」

レイは盾を地面に投げ捨て大きく両手を広げた。

腕に銃弾が当たる。

腕から血が流れる。

大きく息を吸った。

そして吐いた瞬間に敵軍の前方の兵士が炎に包まれる。

「もう少しだ。もう少しだ。もう少しで俺の野望が手に入る。俺はこの国を支配する」

敵軍は戦いをあきらめ敗走の準備に入った。

レイは味方から銃を借りて敵に向かって発砲する。

銃から放たれた弾丸はレイが狙った通り敵の最高司令官の頭を打ちぬいた。

レイはふと幼少期に母親と見た光景を思い出した。

あの頃は全てが懐かしく安全で輝いて見えた。

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