第7話

介護をしていた。

僕はただ闇雲に働いていた。

月給は二十万と少しだ。

働くっていったってそれは疲れる。

おばあちゃんをベッドから起こして車いすに乗せる。

食事の手伝いをする。

「今日は元気だね?」

「そうねぇ」

僕はおばあちゃんを眺めていた。

最初は抵抗があったことも徐々に慣れていく。

ただ時間が過ぎていくことを待ち仕事を終える。

「研一君」

「なんですか?」

僕はそう問いかける。

「この間街で買い物してきてほしいって言ったでしょ。あれどうなった?」

「ああ。村岡さんの花壇に植える鉢ですか?」

「頼まれてたでしょ?」

「今行ってきますよ」

僕はそう言って軽自動車を走らせて村のホームセンターへ向かった。

軽自動車が僕の唯一の楽しみだった。

ホームセンターにつくと僕は買い物をした。

村岡さんの鉢。あとは自分へのご褒美でチョコアイス。

車内でチョコアイスを食べて、その日は家に帰った。

アパートのドアを開ける。

中には彼女の唯がいた。

「おかえりー」

「ただいまー」

唯は看護師だ。

僕は介護士だ。

なんとも似た仕事をしながら2LDKの部屋に住んでいた。

「ごはん出来てるけど食べる?」

時刻は8:00。

テレビでは相変わらずバラエティ番組がやっていた。

「何してもうまくいかねえ」

僕はふとぼやく。

「まぁがんばってよ。仕事始めなんてそんなものだから」

唯は手にネイルをしていた。

僕と唯はリビングで食事をした。

麻婆豆腐とごはんとみそ汁だった。

「唯は仕事慣れた?」

「私は相変わらず苦労してるんだよ。もうやめたい」

「お互いになんか大変だよな」

「ね」

変わりばんこに風呂に入ったあと、僕らは抱き合いながら話をしていた。

温かい布団の中で服を脱ぎ、そしてキスをした。

「いつか結婚したいね」

「そうねぇ」

ふと職場のおばあちゃんと同じ返事が帰ってきたことに僕は少し驚いた。

「今週はどこへいく? 映画? それともショッピング?」

「どこかの公園か海でもいこうよ」

「えーつまんない」

「いいじゃん」

そんなこんなで夜は更けていく。

僕らは深夜前に眠った。

不思議なほど混沌とした自意識の世界に眠っていく。

夜のベランダの窓から射しこむ風があまりに懐かしい。

「ねぇ唯」

「なぁに?」

「いつかもう一度……」

「ん?」

僕らは眠りについた。

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