カバさんは心配性
けものフレンズ大好き
カバさんは心配性
サーバルちゃんとかばんちゃんとの別れてからここ数日、カバちゃんはどうにもやきもきした日々をすごしていました。
そのため、水場にフレンズが来ても全く気付けません。
「・・・・・・・」
「おーい」
「・・・・・・・」
「おーい」
「・・・・・・・」
「シマウマチョップ」
「いたーい」
カバちゃんはサバンナシマウマちゃんのチョップで我に返ります。
「どうしたんですさっきから。というかここ数日」
「うーん、どうもサーバルとあの子のことが気になって……。二人ともとっても頼りないから、ひょっとしたら今頃セルリアンに……」
「だったら付いてけば良かったじゃないですか」
「それは駄目! ジャパリパークの掟に反しますわ」
めっ、とお姉さんらしくカバちゃんは言います。
「ここでは自分自身の力だけで生きていかなくてはなりませんの。なんでもかんでも面倒をみるわけにはいかないわ」
「じゃあもう忘れるしかないですね」
「そんな薄情なこと出来るわけないですわ!」
カバちゃんはばしんと水面を叩きます。
そのせいでシマウマちゃんは頭から思いっきり水を被ってしまいました。
「ご、ごめんなさい!」
「水浴びしに来たと思えばいいですけど。それより、いつまでもそんなことで悩んでたら、自分の方がセルリアンに足を掬われますよ」
「うーん、そうですわねーそうですわよねー」
口ではそう言っても、全然納得している風には見えません。
シマウマちゃんはだんだん面倒くさくなってきました。
これ以上愚痴に付き合ってても疲れるだけなので、そーとその場を後にしようとします。
――しかしその時。
「セルリアン!」
サーバルちゃんが戦ったほどの大きさではありませんが、それなりに大きいセルリアンがサバンナシマウマちゃんの前に現れました。
本来なら逃げるところですが、セルリアンは坂の下にいてさらに間の悪いことに、
「うわっ!」
全身ずぶ濡れになっていたサバンナシマウマちゃんは、足を滑らせてしまいます。
「助けてー!」
「――はぁ!!!」
間一髪、サバンナシマウマちゃんがセルリアンに食べられる寸前に、異変に気付いたカバちゃんが一撃でセルリアンを倒しました。
カバちゃんの力はさばんなちほーでも5本の指に入ります。
「……ありがとうございます、助かりました」
「当然のことをしたまでですわ」
「・・・・・・」
シマウマちゃんはカバちゃんのその言葉が引っかかりました。
「あの、なんで私を助けるのは良くて、サーバルさん達を助けるのは駄目なんですか?」
「え、だからそれは掟が……」
「でも掟通りなら私を無視して良かったじゃないですか。そもそも最初に2人を助けたんでしょう? その時点で掟は破ってるじゃないですか」
「あれは身体が勝手に動いて……」
「だったらそれでいいじゃないですか。私には掟はよく分かりませんが、困ってるフレンズを助けることが悪いことなんて、絶対に思えないです。ただの動物なら、そもそも誰かに助けを求めることなんてできません。でもフレンズになら、それができます。だったら、助けたっていいじゃないですか。そうでなければフレンズになった意味がないですよ」
「シマウマ……」
「だからカバさんも気になるなら、行けばいいんと思います。いえ、行くべきです。それが良かったどうかは助けたあと考えましょう」
「……そうですわ――」
「タイヘンタイヘン」
そのとき、二人の耳に聞き慣れない声が届きます。
二人が振り向くと、そこにはいつもと違う目をしたラッキービーストがいました。
「あなた話せましたの!?」
「タイヘンタイヘン、カバンガユウエンチデピンチ。フレンズハカバンヲタスケテ」
「かばん……って確かカバさんの言っていた……」
「ゆうえんちはここからそう遠くない場所でしたわね」
「え……ああ、となりのちほーだったと思いますよ。私は今ので脚ひねって無理そうですけれど」
カバちゃんはぎゅっと拳を握りました。
「――私行きますわ。ルールの前に本当に困っているフレンズがいたら助けてあげたいですから」
「……いってらっしゃい!」
そしてカバちゃんはみんなと共にあの黒いセルリアンの元へと走るのでした。
おしまい
カバさんは心配性 けものフレンズ大好き @zvonimir1968
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