第2話 これって私のせい?

 何件か、当たり障りのない問い合わせが続いて安心しきっていたのかもしれない。


 無事コールセンター業務終了の時間になった。

 最後の最後まで電話が来なくても「待機」という電話に出られる状況にしておかなくてはいけない。時間になれば、スタッフは「待機」から「作業」へ切り替え。責任者が回線を繋げなくする。


 嘉内は「作業」にするのを忘れていた。


 時間は業務終了から五分後。コールが鳴り響いた。

「え!?」

 コール音に慌てたのは嘉内だけではない。仲間内のスタッフ始め、リーダーも責任者も慌てた。

 そう、嘉内の電話だけが「待機」になっており、責任者は回線を切り忘れたのだ。

「大変お待たせいたしました。コールセンター嘉内でございます」

 その言葉で始まった電話はゆうに五分はかかった。


「何で作業にしないの!!」

 残業になったリーダーに責められた。


 確かに嘉内側のミスでもある。だが、それ以上に責任者側のミスだ。これで「作業」のまま全員が無視したほうが、クレームになるはずである。

 それでも、リーダーは嘉内側だけ、、のミスだと言い張る。


「あれってさぁあ、責任者のミスだよねぇ」

 江井が呆れたように呟いた。



 責任者から、詫びは一切なかった。

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