古民家に住む君に

Lulu

プロローグ

「―特殊地域の配達人、ですか。」

木漏れ日の眩しいオフィスの一角。コーヒーのいい香り。時計の針の音。


その雰囲気をぶち壊す、俺の驚いた声。


「うん、そうなんだよ。そこの仕事が手についてなくてね。頼めるかい?」

どこからかの紙の擦れる音。インクの匂い。足元をすり抜ける三毛猫。


人の良さそうな笑みを浮かべる交渉人。


俺は何しに来たんだったかと心の中でぼやく。そして、腹をくくる。

この言葉とともに。

「俺なんかがお役に立てるなら。こちらこそ、よろしくお願いします。」


沢渡さわたり りょう 24歳。今日から特殊地域専門の配達人になります。

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