第96話 探せ14

予想外の人物がとんでもないところと繋がってしまった。


「よく気づいたね」


萌がめぐみに言う。


「よく使うアプリとアプリの間に居るし、一人だけカメラ目線だったから気になってたのよ。で、この子がどうしたの?」


これまでの事情を聞けないでいためぐみに気づいて、京平が話を始める。

その間にもう一度、恵一は画面を見つめた。


大勢の人間が文化祭を楽しんでいる。

自分が他人のカメラに収まっていることなんて当然、気づきもしないし、気にも留めない。

それが普通だ。


しかし、シャッターが押されている間にもどこかへと流れていただろう人々に紛れて、意思を持ってその場にとどまっている少年がいる。

まるで一人だけ時間の流れに取り残されているような違和感があった。


その存在に気づいてからは、そこから目を離すことが酷く難しく感じる。

何故はじめ気づくことができなかったのか、不思議なくらいだった。

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