死んでる僕

第39話 死んでる僕 1

***


平常心を保てなくなったときは、自分を客観視すると良いらしい。

今、自分がどういう状態か言葉にして理解することで、自らをコントロールするのだ。


これをメタ認知と呼ぶ。


あのイチローも、自分を客観的に見つめるもう一人の自分を心の中に置いていると言うからこの方法は信用がおけるはずだった。


「俺、石橋 恵一、23歳。身長175センチ、体重62キロ」


今、道路に仰向けになり、秋空を眺めている。

頭上からはサイレンのやかましい音が聞こえていた。


左ひじをついて上体だけ起こし、ひねるようにして音のする方を見る。

急いで走る救急車のお尻が見えた。


「道路の両側はへい。住宅地の中を走る道路のよう」


そして、今、俺の身体の中を、幼女が走り抜けて行った。


「俺が透けてる…」


何故こうなった。

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