第20話 けーちゃんの貢ぎグセ 8

「よくその子を守ったね」

全てを話したとき、母はそう言った。


「偉いよ。萌がしたことは立派なことだからね」


そして、話してくれた。

「萌は覚えてないかも知れないけどね、あなたがまだちっちゃかった頃には今日みたいなことがいっぱいあってね」


「…一杯?」


「そう。けーちゃんなんて何度萌に助けてもらったかわからないんだから!あの子、昔から萌には沢山プレゼント買ってきたでしょ?」


お母さんにはたまにしかくれないのにねと、小さな小言を挟んで母は続けた。


「その、けーちゃんからあなたへのみつぎ物たちが片っ端からおかしな壊れ方するのよ。その度、萌は『けーちゃんを助けないと』って泣くし、言った通りのことが起きるし」


自分の事なのに全く覚えていないことに驚きつつ、萌は黙って聞いていた。


「でね、お母さんもお父さんもけーちゃんもじじばばも、『ああ、萌には私たちに視えないものが視えるのね』ってわかった。だから、あなたがそのせいで傷つかないようにいっぱい信じて、そして、誰にも言わないで守ってあげようって決めた」


先ほどの、あまりにリアルな事故の光景を見た後でなければ、

そして、自分が知らぬ間に、見知らぬ少年に怪我を負わせるような奇怪な行動をとった後でなければ、

萌だって今母から聞いた話を信じたかわからない。

自分の事なのに自分だけが知らなかったなんて。


「萌だってその力のせいで超能力研究機関に拉致されて解剖されたら嫌でしょう?だから今日は二人で警察に賢い嘘をついて、怪我をさせちゃった子にはごめんねを言って、美味しいもの食べて帰りましょ」


そのあと、二人で口裏を合わせ、神妙な顔を貼り付けて賢い嘘をついた。

何と言ったかは忘れたが、無事帰れたので大丈夫だったんだと思う。

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