第15話 けーちゃんの貢ぎグセ 3

しばらくどうしたものかと黙っていたが、恵一も黙ってこちらを見つめ、待ちの姿勢を崩す様子はない。

萌は仕方なく、腹をくくった。


「京平とはさ、兄さんも知ってる通り付き合いが長いだろ」


「そうだな。幼稚園からだもんな。腐れ縁だな」


二人が通った幼稚園、小学校、中学校は、大学の付属校になっていた。

エスカレーター校みたいなもので、進学の節目に多少の入れ替わりはあっても、ほとんど面子めんつが変わらない。


普通なら、京平の様な気の置けない腐れ縁の友人が大勢出来ていて、その友人達と今まで同様、同じ系列の高校へ進学する。

そう。自分が『普通』だったなら。


「中学のときのこと、母さんから聞いた?」


「いや。詳しくは知らないよ」


ただ、恵一にも萌の言う「中学のときのこと」がどの一件を指すのかは分かる様だ。


「それも含めて話すよ。全部」


萌にとっては嫌な記憶だが、『視えること』を知っても変わらず居てくれるかけがえのない友人が増えた今日、怖いものなど無かった。

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