けーちゃんの貢ぎグセ

第13話 けーちゃんの貢ぎグセ 1

***



「やっぱり。来ると思ったよ」


アパートの共用玄関で恵一の部屋番号を呼び出すと、機械から少し呆れた声が返ってきた。

疑っていた訳では無いが、約束すると言う言葉通り家に居てくれた事に安心する。


「どうぞ」と言う言葉の後で正面の自動ドアが開いた。

最初はこのアパートの、セキュリティの仕組みと言うか、入り方がよくわからなくて戸惑ったものだ。

今ではもう慣れたが。


エレベーターで4階まで上がり、恵一の部屋のインターホンを押すと直ぐにドアが開いた。


「わざわざ確かめに来なくてもちゃんと家に居ただろ?」


中からやっぱり少し呆れた顔をした、部屋着姿の恵一が出てくる。


「お邪魔します」と言いながらその脇を通って中へ入るとき、微かに石けんの香りがした。


(そういえばさっき電話したとき、風呂入ってたな…)


あれから言われた通り地学の授業はもちろん、他の授業もサボらず出席して来た。

残り香とは結構長く残るものだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る