かばんちゃん あらなんですの? かばでした
名田らい
かばんちゃん あらなんですの? かばでした
ラッキーさんと合流した後、カバさんがついて来てくれることになりました。
「カバも一緒だと心強いね!」
「まったく、サーバルとその子だけだと心配になりましてよ」
実はお別れした後も、カバさんはこっそり追いかけてくれていたのだそうです。
「その子じゃなくてかばんちゃんだよ。前にも紹介したじゃない!」
ぼくもカバさんに「聞いたことない動物ですわね」と言われた覚えがあります。
「あら? わたくしの名前ですの?」
「カバじゃないよ! かばんちゃん!」
「ややこしいですわね」
「全然ややこしくないよ!」
でも、確かにカバさんとかばんだと一文字違いでややこしいかも……。
そう思ったので、訊ねてみることにしました。
「ぼく、違う名前にしたほうが良いのでしょうか?」
「れっぷうの黒手袋などかわいらしいのではなくて?」
間を空けずにカバさんが新しい名前を提案してくれます。
烈風の黒手袋……ちょっとぼくには格好良すぎる名前かもしれません。
あと、烈風はどこからきたのでしょうか?
「かわいくないよ! かばんちゃんはかばんちゃんだよ」
はっきりとサーバルちゃんが言ってくれました。
……そうだ、かばんはサーバルちゃんにつけてもらった大切な名前だったんだ。
ぼくはそれを思い出しました。
「ええと、やっぱりぼくはかばんのままでいようと思います。ややこしい名前ですが、ごめんなさい」
大切な友達からのおくりものである名前を、これからもぼくは名乗っていきたいんです。
「れっぷうの白帽子でもよろしくてよ?」
「カバがつける名前って何かおかしいよ!?」
カバさんのご厚意はありがたく思いましたが、ぼくの名前はかばんです。
そう伝えると、カバさんは「ほこれるものがあるのは大切なことよ」と言って、それ以上名前の提案はしませんでした。
たぶん、ぼくがかばんであることを認めてもらえたのだと思います。
──ぼくは嬉しい、のかな?
心があたたかくなったような気がします。
そんなやりとりをして、ぼくたちはじゃんぐるちほーを訪れていました。
「ねぇ、かばんちゃん」
「あら、なんですの?」
「あはは……」
少しだけお茶目なカバさんは、たまにとぼけてそんなことを言います。
ぼくは冗談だと分かっているのですが、サーバルちゃんはその度に。
「だから、カバじゃないってば!」
と言って、カバさんを叱ります。
「あら、サーバルに叱られてしまいましたわ」とカバさんはぼくにクスリと笑いました。
そんな穏やかな日のお話でした。
かばんちゃん あらなんですの? かばでした 名田らい @natarai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
未完のみずかんフレンズ/みずかん
★21 二次創作:けものフレンズ 連載中 29話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます