僕の右手
ユウキアイキ
僕の右手
目が覚めると右手がなくなっていた。なんでなのかは分からない。
ただベッドから体を起こすのが妙に苦労で、立ち上がったときに体のバランスの偏りを感じ、違和感の原因を探していたら、それが原因だった。
どこに落としたんだろう? それとも誰かに盗まれたか? 心当たりがないので全く見つからない。だから、僕は代替品を買いに行った。このままではペンを持つこともできず高校生活に支障がきたすからな。
お店には金属で作られた四肢が売られていた。グロテスクな装いとは裏腹に人々が賑わい集うお店に、新しい右手を選ぶ僕。
脳の電気信号を早く感知する手か。手先が器用になるから、ギターを弾く人や工芸品を作る職人に人気らしい。
こっちは記憶をデータ化して記録する手か。忘れん坊だから欲しいけど、これを使うとテストでカンニング扱いされるからダメだな……。
「……となると、これだな」
つい声に出して選んだ右手は、ICが埋め込まれた腕だった。
今までICを埋め込んだカードが流用されていて買い物に使われたが、それの入った財布を取り出すことがめんどくさいため、今では多くの人がICの入ったアクセサリーをつけたり、体にICを埋め込んだりしている。
だから、僕もその流れに乗ってその右手を買うことにした。
これでこれからの生活は快適になるだろう。きっとクラスでも話題になると思うと心が躍ってきた。今では親からもらった大事な体を失ったことはどうでもいい。
なぜなら、偽りの体を手にして、僕は明るく照らされた日常を生きていきたいのだから。
僕の右手 ユウキアイキ @yukiaiki
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