第3話 ザコとは違うのだよ、ザコとは。

私は〇ッガイもどきの視界の悪さのため、主任に手を引かれ 正面玄関で、


お客様をお出迎えすることになった。


「いらっしゃいませ!」


一斉の挨拶と共に、私もペコリと〇ッガイもどきのまま礼をする。


お客さんの反応は微妙だった。


というのも、たぶんご年配の人ばかりだったので、 この不思議な着ぐるみが


何なのかを理解できないのだ。 これが何かわかる世代の人の反応も微妙だった。


苦笑い、失笑。だからやりたくなかったんだ。


オタクっぽい男性から「〇ッガイ?」と言われた。


私は嬉々として、飛び跳ねて見せた。


「何で〇ッガイ?ザコじゃないの?」


男性は半笑いで言う。


「ザコとは違うのだよ、ザコとは。」


私が言うと男性はゲラゲラ笑った。



「すみませんね、お客様~。バカ、余計なこと言うなよ。」


主任に頭をはたかれてしまった。


「げー、なにこれ!だっせえ!ちょーだっせえ、この着ぐるみー!」


小学生のクソガキが、私の足を蹴ってきた。


私は、ムカついたので、〇ッガイの中指と思われる指を立ててやった。


「やめろ、アホ!」 また主任にはたかれる。


「バーカバーカ、ざまあみろ。」


クソガキにはやし立てられ、私は〇ッガイもどきの中で歯軋りをした。


一時撤退し、またお昼からの丸太切りイベントに私は借り出された。


お客様に丸太切りで、タイムを競ってもらい、優勝者には賞品をお渡しするというイベントだ。


炎天下の中、そのイベントはテントの中で行われた。


私〇ッガイもどき「ナイスちゃん」はお客様の応援要員だ。


私は十分クールダウンと、水分補給をしていたのだけど、暑さで私は参ってきた。


応援のダンスをしながらも、気ぐるみの中は滝のような汗が流れ


ついに私は吐き気を催してきた。


ダメだ、こんな物の中で吐いたら。 ヤバイって。


でも、どうにももう我慢できない。


気がついたら私は、通気穴の〇ッガイの口の部分から嘔吐した。


会場は大惨事だった。


「ギャー、〇ッガイが吐いた!」


私は急いで回収され、休憩室に運ばれたのだ。


私は主任の車で、病院へ運ばれた。 2時間点滴を受け、私は回復。


大事を取って、その日と次の日も休みを取るように言われた。


その日の夕方、私の家に佐久間がお見舞いにきた。


「大丈夫なのか?退院して。俺、病院まで行っちゃったよ。」


佐久間が心配そうに私の顔を見た。


「あ、へーきへーき。それ、アイス?気が利くねえ。食べたかったんだぁ!」


私がアイスにぱくつくと、佐久間は呆れて笑った。


「その様子だと大丈夫そうだな。ゆっくり休めよ。」


佐久間、ホントは優しいんだな。いつも憎まれ口ばっかたたくくせに。


結局、私は創業祭の半分は戦力外となったのだ。


2日ぶりに出社すると、店長が 「おー水戸、大丈夫か?」 と言ったので、


「だいじょばないですよ。あれから、ナイスちゃんどうしたんですか?」


と私が答えると、


「あー、あれ?もう使い物になんねーから捨てたw」


としれっと言った。 こらこら、私の努力はなんだったんだよ。


あんなに恥ずかしい思いや、悔しい思いをしたのは。


「まぁ、それなりに盛り上がったから。結果オーライ?」


店長はカラカラ笑った。



殺す、いつか殺す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る