誰かっ…止めてください!

冬木 麻衣

第一話 事件

―――某所 街路地


赤いランプが夜の建物を照らし、その周りに何事かと人々が集まり『KEEP OUT』と書かれた黄色い線の前で中を見ようと野次馬が集まっていた。

そして、どこから情報を得たのかこういう事件には必ずマスコミが続々と集まり、カメラを回す。

まあ…仕方ないか。

最近話題の通り魔事件だからなぁ…

鬱陶しくもあるがマスコミはこれが仕事だから仕方ない。

俺もこれが仕事だから行くしかない。



「はい、ちょっと通らせてもらえますかー」



ひと声かけると事件現場を見ようとしていた

野次馬たちが、一斉にこちらを向きどこか戸惑いながらも道を開けてくれた。

「すいませんね」と謝りながら前のほうに行くと、ちょうどカメラを回していたのかアナウンサーと目が合ってしまい、



「警察の方ですか?事件について聞きたいのですが!」


…かわいい顔してるが、だいぶグイグイと来るアナウンサーだな。



「申し訳ありません。詳しくお答え出来ない決まりになってまして…通らせてもらえますか?」



一応、俺も警察の端くれだ。

問題にならないよう丁寧に答えたが、アナウンサーはお構いなし。


「今回の事件、目撃者のお話によると例の通り魔事件だと聞いたのですが、犯人の足取りはついてるんでしょうか!」



ダメだこいつ。聞いちゃくれない…

答えるのも面倒くさくなり、「守秘義務ですので」と適当にあしらい黄色い線の内側に入っていった。



「お疲れ様です」



そう声をかけたのは俺の上司の武本篤志。

体が大きく熊のような大男である。

体がでかいから動きが鈍いと思いきや、足はかなり速いので逃げる犯人は

あっという間に武本さんに捕まりその走る姿はまさに熊に追いかけられてるようだったと、捕まえた犯人から聞いて不謹慎にも笑ってしまい、案の定武本さんの拳骨を食らった。


「おう、お疲れ!遅かったな」


「野次馬とマスコミに捉まってました…」


「あのマスコミの姉ちゃんだろ。俺も捉まったんだわ」


「え、武本さんもですか?」


あのアナウンサーよく武本さんに声かけたな…

俺だったら声かけないわ。


「んで、早速だが…」

武本さんは真剣な顔つきに変わり和やかだった空気ががらりと変わった。


「高瀬も聞いたと思うが、例の通り魔事件だ。

被害者は意識はあるが脇腹を刺され病院に搬送、犯人は逃走中。被害者が意識あるときの話によると普通に歩いていたらいきなり刺され、地面に倒れこんだらしい。

犯人の顔は見えずそのまま走って逃走したそうだ」


「……手口はやはり同じですね。」


「ああ。十中八九、同一人物だろうな…今、鑑識が犯人の手がかりを探してる。俺たちは周辺の防犯カメラ、目撃者を捜すぞ」



「はい!」

さあ、鬼ごっこは終わりだ!

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