修復!ジャパリ城

けものフレンズ大好き

修復!ジャパリ城

「いやー!」

「うおー!」

 へいげんちほーでは、ほぼ毎日ライオンちゃんやヘラジカちゃん達の雄叫びが聞こえます。

 ただし、今日はそれ以外の、もっと大きな音もへいげんちほー中に響き渡りました。


「うぉー!!!」

「あ、ちょっとヘラジカ、それ以上はまず――」

 

 ぱっかーん!!!


 ずどどどどど…………。


「あーあ……」

「……困ったときは博士かかばんに頼めばいい! 今はかばんがいないから博士だ!」

「だねー」


『お前達はバカなのですか?』

「いやー面目ない」

「はあ、仕方ありませんね。そういうときはビーバーに頼むと良いです」

「我々は賢いだけでなく顔も広いので、私達の名前を出せば嫌とは言えないのです」

「ちょいなのです」

「ちょいちょいなのです」

「わかったぞ!」


「……と言ったことがあったのだ!」

「はぁ……っす」

 突然何の説明もなく、こはんちほーからヘラジカちゃんに無理矢理連れてこられた……というより掠われたビーバーちゃんは、ようやくその理由が分かりました。

「つまり俺っちにその壊れたお城を修理して欲しいんっすね」

「その通り!」

 今は廃墟となってしまったお城の前で、その原因であるヘラジカちゃんは胸を張って答えます。

「いや~、まさかヘラジカがお城の壁を突き破って、土台の柱まで突き抜けるとはね。流石の私もびっくりしたよ」

「流石ヘラジカ様ですわ!」

『・・・・・・』

 シロサイちゃんだけは素直に褒めますが、他のフレンズからすると明らかにやり過ぎでした。


「でも修復と言っても、俺っちこの建物の前の状態を知らないから、せめて絵がほしいっす」

「でもそんなものないしなあ……みんなそういうのある?」

『・・・・・・』

 ライオンの言葉に一同黙ります。

 実は近くにパンフレットがあり、そこに写真もあったのですが、かばんちゃんのように気付くことが誰にもできませんでした。

「うーん、そうなるとどんな建物だったか聞いて建てるしかないっすね」


「大きかったぞ!」

 早速ヘラジカちゃんが答えます。

 それを皮切りに、次々とフレンズ達はお城について話し始めました。

「石っぽいのと木の建物だったね。3階だてて階段があったよ。床はほとんど木だったかなあ」ライオンちゃん。

「たしか扉はみんな横に開いたな」オーリックスちゃん。

「でも大将のいる部屋は何か柔らかい床だったような気がする。あと滑れる坂もあったよ」オリックスちゃん。

「入口は大きな木の扉だったよ。私だいたいそこにいたから……」ツキノワグマちゃん。

 ライオンちゃん組は実際に住んでいたので、それなりにしっかりと覚えていました。


 けれども、ヘラジカちゃん組の方は……。

「私より重そうでしたわ!」シロサイちゃん。

「てっぺんに角があったですぅ!」ヤマアラシちゃん。

「私と同じぐらい固かったね」アルマジロちゃん。

「拙者でなければ、隠れられるような所は見つけられないでござろうな、ふふふ……」カメレオンちゃん。

「……ちょっと怖かった」ハシビロコウちゃん。


「とても同じ建物について話してるとは思えないっす……」ビーバーちゃん。


「そういうわけで頼んだぞ!」

「私達も手伝うからさー」

「うう、でも俺っちも成長したっす。プレーリーさんに頼らず、自分だけでもやれることを証明したいっす。頑張るっす!」


 そして数日後――。


『・・・・・・・』


 へいげんちほーのフレンズ達は、完成したお城を前に呆然としました。

 いちおう完全に潰れたお城の建材から石の(正確には漆喰ですが)3階建ての建物は出来上がりました。

 内装もライオンちゃん組の意見を取り入れた構造になりました。


 ただし外見は……。


「重そうではありますわね……」

「角もあるですぅ」

「むしろ以前より堅くなった気が……」

「ここで隠れるのは拙者以外無理でござろうな」

「……怖い」

 

 なんということでしょう。

 修復されたお城は、半球形の大きな……鬼の顔のような建物になってしいたのです。

 3階の目に当たる部分に窓があり、そこから滑り台、てっぺんには特に意味の無い角が2本、入口の木の扉は口にしか見えません。


「どうっすか?」

「少なくとも、以前とは全く違うものにはなったね~」

 ライオンの言葉に全員が頷きます。

「そんなあ~」


「気に入った!」


 しかしヘラジカちゃんだけは満足そうです。


「だったらこれからはヘラジカたちがお城で住んでみる?」

「いいのか!?」

「たまにはフレンズらしく外ですごすのもいいかなーって。みんなもそれでいい?」

 「大将がそう言うなら」とオーロックスちゃん達も、特に反対はありませんでした。


「まあ違う物になっちゃったけど、ありがとうねビーバー」

「うむ、助かったぞ!」

「そう言ってくれると嬉しいっす。でもどうして壊れたりしたんすか?」

「いやー、実はヘラジカとかけっこしてて。ヘラジカって急に止まれないからそのまま――」


「そうだ!」


 突然ヘラジカちゃんが大声を出します。

「まだあのときの勝負が済んでいなかった! 今度こそ勝つぞ! 準備しろライオン!」

「えー、しょうがないなあ」

「ゴールは新しくできた城だ! 行くぞ!」


「ああ、そこはかとなく嫌な予感がするっす……」


                                  おしまい

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修復!ジャパリ城 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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