創作BL短編詰め合わせ

青野

死人に口なし

俺の前に神を名乗る奴が出てきた。しかも死神だそうだ。出てくるや否や死神は俺にこう告げた。

「あなた三日後に死にますよ」

と、薄ら笑みを浮かべて。

「おいおい、それは笑えない冗談だな」

 頭でもおかしいんじゃないのか。一度、医者に診てもらったほうがいい。

「冗談と思うならそれでもいいですよ。では、私はこれで帰りますね。また来ます、キョーマさん」

 最後まで笑みを張り付けていた黒服男、又は死神(仮)は何処かへ消えてしまった。名前を呼ばれたのは少し気がかりだったが、まぁ、いいかと思った。

 それからというもの一日目は何事もなくいつも通りに仕事へ行きメシを食って……と普段と変わらない日だった。二日目も一日目と同じく何もなかった。もう死ぬのすらも嘘に思えてきた。最初から信じているわけでもないが。

 しかし三日目の深夜、2時を回った頃、体が金縛りにあったかの様に動かなくなったのだ。俺は恐怖心で心がいっぱいになった。

「こんばんは、キョーマさん。もうすぐココともお別れの時間ですね」

 突然耳に入ってきたのは三日前に聞いたあの声だった。逃げ出したいそうは思ったが体は動いてくれなかった。

「キョーマさん今からキョーマさんの全てを貰いますね」

 全て、全てってなんだ?え、わけが解らない。

「まっ…てくれ、説明が、足りないんだ」

 やっと出てくれた声。だけど俺が息を吸った後にはだせなくなっていた。

「言葉の通りですよ、キョーマさん。あなたの身体や心、心臓も全て、私が貰うんですよ」

 その言葉を聞いた瞬間俺は愛しそうに恍惚の笑みをうかべている奴が死神であるとようやく理解した。しかしその理解は遅すぎた…。


 目が覚めた。俺は、どうやら悪夢でも見ていたらしい。服が汗で蒸れていた。でも寝起きは案外すっきりしていて、心なしか身体が軽くなっている気がした。

「あの後、やっぱり何も無かったんじゃないか」

 ホッっとため息をついて安堵した。もう二度とあんな怖い思いはしたくない。

 そう思っていたのも束の間だった。

「おはようございます。キョーマさん、気分はどうですか」

 最近よく聞く声だ。死神の声。また、昨日の恐怖が俺を襲う。

「え……、ぁ…」

 怖くて声が震える。頭が混乱して上手く言葉を発することができない。そんな俺を見て愉しそうに微笑む死神。

「怯えなくても大丈夫ですよ。だって、キョーマさんは、もう、私のなんですから」

 話によると三日前にはもう俺はなくなっていたらしい。

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