少女たちは嘘をつく
たまき
少女たちは永遠を知っていた
花のなまえ
国を鎖し、ごく一部の交流のみを持ち続ける時代は終わり、外つ国の文化が流れ込んできた時代。帝都の片隅でちいさな女学校が開校した。外つ国風の建物と文化に囲まれながら少女たちは日々の暮らしを営む、寄宿制の女学校。
少女たちは家柄も身分も関係なく、ただの少女として生きるために、花のなまえを与えられた。
少女たちは期待と不安を胸に抱き、この学舎の門をくぐる。そして、全てを奪われ、最初の贈り物を受け取るのだった。
煉瓦造の建物の一室で少女は背筋を伸ばし、椅子に腰掛けていた。花の模様のついた薄紅の小袖、深い緑の袴を身につけ、足元には皮の長靴を履いている。腰まである、黒くて豊かな髪には後頭部の高い位置に赤い髪結紐が結ばれていた。
「今日から、英として生きてゆくのです、いいですね?」
それは否とは答えることのできない、問いかけ。はなぶさ、と名付けられた少女は渋々という様子で頷いた。
「分かりました、けれど……」
話は終わりだと言うように、少女を名付けた女性は英の向かいの椅子から立ち上がる。ふわりと、着物に焚き染めた香が鼻腔をくすぐる。諦めたように、少女もまた立ち上がる。衣擦れの音を微かに立てながら、部屋をあとにした。
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