垣根トラスト

いしげマサアキ

第1話 涙の理由

「人はいつか失ういくつもの悲しみを乗り越え笑顔になれるのだろうか」


天川出高校二年青街空はふと窓の外を見ながら考えていた、耳に入ってくる数学教師の数式などよそに遠い青空を見つめてると見覚えのある動きと声が聞こえる。


「おーい空ー!今から大活躍すっから刮目すべし!」


声の正体は幼馴染の三年大原陸人、

体育でサッカーの試合をするようだ。試合が始まりすぐさま陸人がボールを華麗なドリブルから俊足で抜いていきシュート、ゴールに叩き込んだ。


「どーよ!有言実行っしょ♪」

陸人は校庭から空に語りかけた、


空は凄さに苦笑いをしつつノートに

「サッカーはチームプレイでは?」


と大きく書いて陸人に向けた、それを見た陸人は笑いながら大きな丸を両手で作った。


授業が終わり生徒達が下校しだした頃、空も帰ろうとしていた。

部活の関係で陸人は一緒に帰れなかったので一人で下校する事に、夕暮れ時家へ帰ろうと歩いていると、隣町と繋ぐ短い橋で女の子が涙を流していた、


他校の制服を着ていたその子はぽつり「お母さん」と呟きまた大粒の涙を流す。

それを見た空はなんとなくだが自分と似た境遇なのかもしれないと感じていた、


空の両親はまだ幼い頃に事故にあって亡くなってしまい、身寄りのない空を叔父が引き取り育てたのだ、涙を流した女の子はそのまま重い足取りのまま歩いていってしまった。


空はその女の子に過去の自分を重ねていた、「どんなに辛い事があっても、前を向かなきゃ、そうだよね。父さん母さん」再び家に向かい歩き出す。


田島清一郎宅

家につくと叔父の清一郎が出かける準備をしていた、


「ただいま清一叔父さん。どこか出かけるの?」


「ちょっと仕事の打ち合わせがこれからあるんだ、帰り遅いから先飯食って寝ちまって良いからな」


「わかったよ、行ってらっしゃい」

清一郎はそう言うと外出した、空は冷蔵庫に入っていたサラダを出し冷凍のパスタを温め食べた。


食べ終わり後片付けを済ませて風呂に入った後自分の部屋で、ベッドにダイブ...目を瞑り夕方見た少女がふと思い浮かんだ「あの子泣いてたな」


そして翌日、空が起きると既に清一郎が居間でコーヒーを飲みながら書類を見つめていた、


「おう空おはよう、朝飯はハムチーズトーストとコンソメスープな」

テーブルには既に湯気だったスープとパンが置いてあった、


「おはよう清一叔父さん。昨日はいつ帰って来たの?」


「0時前とかだったはず...そうだ空、明日から仕事の都合で一週間ほど家空ける事になってな」


清一郎はそう言うとテーブルに財布から取り出した二万を置いた

「悪いんだが、これでいない間生活してくれな」


「一週間も帰って来れないなんてお仕事大変なんだね。でもこんなになくても全然大丈夫だよ」


そう言うと空は一万を取り残りを返した


「そうか?まぁなんかあったら連絡してくれりゃ戻れない距離じゃないから万が一の時は」


「うん。連絡するよ、ありがとう」


清一郎はその言葉を聞き、空の頭をくしゃくしゃに撫でる。

「じゃあそろそろ俺は先出るから」


飲んでいたコーヒーを飲みきり外に出ていった、空は朝ご飯を食べて準備し学校へと向かう


天川出高校は共学の三階建屋上がある学校で、一年は三階、二年は二階、三年は一階に各クラスがある。


二年二組が空のクラスで、一時間目の授業が終わり一息ついていると携帯に幼馴染の大原陸人からメッセージが届いた。


「空!転校生!転校生だ!」


「えっ、りっくんのクラスに転校生来たの?」


「そう!そんでその子めっちゃ美人なんだよ!!」


「へぇ、それは良かったじゃんか」


「それで昼休みに一緒に食べよって誘おうと思うんだけど」


「ふむふむ、アクティブだね。良いんじゃない?」


「だから昼休みクラス来てな!」いきなりの陸人の発言に疑問符がつく、


「へ、...繋がらなくない?」


「いやいや一緒に食うからだよ」


空は察した

「あーうん。つまり二人では厳しい訳だ、間が持たんと」


「バレた?」


「まぁこんだけ付き合い長いとね」


「話が早くて助かる。んじゃまた昼休みに!」


「わかったよ」


やりとりが終わると空はふぅーと息を漏らしながら「転校生ねぇ」っと発する。


空のクラスにも四月のはじめ転校生が転入してきた、


名前は雨霧八雲、彼女は文武両道や才色兼備と言う言葉が相応しい優等生。


だが転入初日から近寄りがたい雰囲気をまとい興味を持っていたクラスメートたちも独特の空気感からやがて孤立...いや孤高と言う言葉だろうか、


とにかく彼女は仲良くなるハードルが高そうなのだ。どんな子なんだろ、そんな事を思いながら予鈴が鳴り再び勉学へと意識を向ける。



昼休み、約束通り一階陸人のクラス三年四組へと向かう、天川出高校は購買部が一階にあって今日も激しい争奪戦が繰り広げられていた、それを横目に四組に入り陸人を探していると


「おっ、空ーこっちこっち!」


声が聞こえた方を向くとそこには陸人の後ろの席に見覚えのある少女が、


「空、こちら九条さん」


「九条奏です。宜しくお願いします。」


その少女は昨夜橋で泣いていた少女だった


「ああえっと、青街空です。こちらこそ宜しくお願いします。」


「空は幼馴染で住んでるとこが近いんだ」


「そうなのですか、...その校章、二年生のですよね。」


「ええ二年のです。」


「良いですね。学年が違くても仲良いって」


それを聞き空と陸人はお互い苦笑いを浮かべた


「あははは、えっと九条さんはどちらの高校にいたんですか?」


「名門伊吹高校だってさ」


空が尋ねると陸人が間髪入れず答えた、もう聞いたのかよっと表情をしながらもう一つ尋ねる。


「じゃあこの町に来たのは初めてですか?」


「はい、以前は二つ隣町だったので」


「ああそうだったんですね。」


「そうだ、この町初めてなら近隣の店とかレジャー施設とか案内」


「ごめんなさい、持病の関係であまり外に出歩いたりとかは出来ないんです。」


陸人の言葉を遮り申し訳なさそうな顔をしながら拒否反応を示した、


「そっか、こっちこそごめん。体調の事とか何も考えずに誘おうとして」


「いえ大原さんは何も悪くないです。転校してきたばかりの私に気を使って話しかけてくださったり優しい方ですので」


それを聞き内心美少女だったから話しかけてみたなんて死んでも言えない、そんな表情を陸人がしていて空はつい吹き出してしまった、


「確かにりっくんはある意味優しいよね」


嫌味を言うと陸人は小声で「空、性格悪いぞ」っと肘で小突く、昼食をだし、空はコンビニのパン、陸人は二段弁当、奏は小さめの弁当を各々食べ進めていると奏が尋ねた。


「お二人は幼馴染と言ってましたが、いつからなんですか?」


「確か俺たちが小学生の時からだから十一年くらい前からかな」


「そうだね。りっくんが一年の時に話しかけてくれたの覚えているよ」


「懐かし〜、あの頃からいつも一緒に遊んでたよな」


「そうだね。それで高学年になって凛ちゃんも混ぜてーって」


「あっ、凛ってのは三つ下の俺の妹で」


「妹さんがいるんですか...だから大原さんは面倒見が良いんですね。」


不意に面倒見と言うワードが出たので、空はまた笑った、


「ええ、りっくんは面倒見が良いんです。」


「普通だよ普通!」


陸人は若干恥ずかしそうにしながら


「そういえば九条さんって兄弟とかいるの?」


奏はその問いに少し戸惑いながら


「ううん。一人っ子です。」


「そっかじゃあ空と一緒だね。」


「青街さんも一人っ子なのですね。」


「はい、でもりっくんや凛ちゃんがいたから不思議と一人って感覚無いんですけど、」


「まぁそうだね。家近いし兄弟みたいに一緒にいたし」


それを聞き奏は羨ましそうに「良い関係ですね。」と小さな声で言った。


昼休み終了のチャイムが鳴り、自分の教室に戻った空は、 教科書を淡々と読み上げる雨霧八雲を見ながら、転校生でも印象はこうも違うものかと考えていた、


聞いた話によると両親が有名なピアニストとバイオリン講師と言う音楽環境にいた事により、自身もピアノを幼少期から学び、数多のコンクールに出場して輝かしい結果を残している。


そんな音楽一直線な彼女はどこかクラスの雰囲気に違和感があり合わせる気も無いのであろうというのが空の見解だ、


そして違和感に関して言えば九条奏にもあった、優しげな言葉遣いの中に一定の距離を保とうとする線引き、ただ持病があるだけじゃない何かがあるんじゃないかと...そう感じるのはやはり悲しげなあの涙を目にしたからだ、


そんな事を考えていたら授業はあっという間に終わっていた、下校時間になり陸人から今日も部活があると連絡を受けた、陸人の所属しているバスケ部はほぼ毎日部活がある。


これと言った優れた実績がない天川出で唯一全国大会まで出場する強豪チームである。なので必然的にバスケ部は練習時間が多い、ましてや陸人は今年のエースを担うと言われているほどだ、


「りっくん夏に向けて頑張ってるし試合応援しに行こう」

空はそう心に決め帰ろうとした、すると担任の教師がやってきて


「青街ー悪いんだが、特別教室にある明日配布するプリントを今のうちに持ってきて教卓に乗せといてくれないか?先生これから職員会議で忘れてしまいそうだからさ」


空は内心捕まってしまったと頭で考えながら尋ねる。


「わかりましたけど、えっと置いてある場所ってどこなんですか?」


「ああそれなら今職員室行ってる雨霧が場所知ってるから聞いて取りに行ってくれ」


「は、はぁわかりました」


「頼んだぞ!」そう言うと教師は職員室へと向かった、先生と入れ代わりで雨霧八雲が教室に戻ってきて、


「あの雨霧さん」


「なに?」

鋭い返答


「特別教室にある配布用プリントを探してるんだけど場所教えて貰えないかな?」


「...」間が少しあり、やがて口を開いた


「プリント、持ってくれば良いのかしら?」


「あ、いや違くて、場所教えてくれれば取りに行くから」


「そう、じゃあ特別教室入って奥にある机の引き出し二段目」


「わっわかったよ、ありがとう」


「ねぇ青街くん...だったよね?」


「うん。喋ったことないのに名前覚えててくれたんだ」


「私たち何年か前にどこかで会った事無いかしら?」


「えっ...どうだろ、ここ数年なら少なくとも記憶にないんだけど」


「そう、まぁいいわ、それはあの人に尋ねればわかる事だから」


「?あの人ってだ」八雲は遮るように言い放った


「さようなら青街くん。また学校で会いましょ」

そして足早に去っていった


「さ、さようなら雨霧さん」空は戸惑いながら挨拶をし特別教室へと向かった。周りと距離を置く無愛想な転校生かと思ったら意外と普通に会話が出来て、しかも面識があったかもしれない可能性がある。


雨霧八雲への印象は少し変化した、特別教室にて配布プリントを発見し教室の教卓に乗せ、空は帰る事に

帰る途中に明日から一週間仕事でいなくなる叔父の為に、晩御飯を腕によりをかけて作ろうと思案しながら歩いていると、


隣町とを繋ぐ短い橋にまた九条奏がいるのが見えた、奏はまた遠くを見つめていて空が声をかけようと近づいてくと、携帯の着信が鳴り電話に出た、


「はい、もしもし」


それを見た空は邪魔にならないよう気づかれない様に通過して、また明日挨拶すればいいかと思い歩いていると後ろから大きめの音が聞こえる。


「えっ、お父さんが」


その声と共に何かが落下した鈍い音も聞こえ空は思わず振り返った、すると地面に落ちた鞄とスマートフォン。


そして膝から崩れ落ちた九条奏の姿が目に映る。空はすぐさま駆け寄り声をかけた、


「九条さん!どうしたんですか、何があったんですか!」


奏は虚ろな目で空の方に向きながら

「お父さんが、お父さんが」と力なく呟く、


それを聞き何が起きたのか把握する為、空は奏が落としたスマートフォンを手に取り耳にあて言う


「もしもし!すいません。何があったんですか!」


通話中だったのを確認しながら言い放つと


「もしもし、えっとあなたは九条奏さんのご友人」

相手が言い終わる前に食い気味に言った


「そうです!とにかく何があったのか教えてください!」


「はっはい、九条奏さんのお父様九条雪彦さんが事故に巻き込まれて病院に搬送されてるんです。それで、容態はかなり深刻みたいでして」


それを聞いた空は驚きながらもすぐに

「搬送された病院はどちらですか!」っと訊いた、


「明成病院です。」


「明成ですね。わかりました、ありがとうございます!」


電話を切り崩れ落ちた奏に声をかけた、

「九条さん!明成病院です。急ぎましょう!」


だが、その声は届いていなかった


「お父さんお父さん。」そう呟きながら震えていた奏を見て、空は肩を掴み大きな声で


「今は悲しむより駆けつけるのが先です!」


その声を聞き奏の目に微かに光が宿り、震えながら立ち上がる。空はタクシーを急いでつかまえ奏と共に明成病院へと向かった。



病院に到着すると救急車から患者が運ばれてるのが目に入った、それを見て奏は全速力で駆け寄り叫ぶ


「お父さん!お父さん死んじゃ嫌だよ!」


病院内に搬送されていく患者は小さな声で


「奏...」

九条雪彦と見られるその男性は続けて

「ごめん。約束守れなくて」


っと今にも消え入りそうな声で奏の手に触れた、奏はその手を握り


「嫌だよ!怖いよ!私を一人にしないで!」


「本当にごめんな」


その言葉と同時に手を離し緊急治療室へと消えて行く、奏はその場に泣き崩れた。空が追いついて、そこにいたナースに容態を聞いた。


打ち付けた箇所が悪く更に衝撃が大きかった為に危篤状態である事、とにかくどうなるかわからないから遺族の方にはここで待っていて欲しい事、そして万が一の結果を受け入れる覚悟をしておいて欲しい事、それを聞いた空は泣き崩れた奏に声をかけなんとか椅子に座らせた。



泣き声以外音はない長い沈黙が続き、そして治療室のランプが消灯した、中からドクターが歩いてきて奏は立ち上がり震えながら


「お父さんはお父さんは...」


その後の言葉は紡げなかった、ドクターは間を取り深刻な面持ちのまま口を開いた


「...残念ながら救えませんでした」


その言葉を聞き奏の目からまた大量の涙が零れ落ちた


「そんな、そんな、おっ、お父さん」


止めどない涙が溢れる。それと同時に奏は自分の右手首を左手で握り胸に持ってきてひたすら泣き続けた、空は声をかける事が出来ず暫くの間隣で唇を噛み締めていた


長い時間が経ち空の携帯に着信が鳴る。それは叔父の清一郎からだった、時刻は十九時二十分。急いで外に出て電話に出る。


「今どこにいるんだ?もう日も暮れて普段なら家にいんのに、いないから心配したぞ」


叔父、清一郎の問いに空は


「ごめん叔父さん。今明成病院にいて、えっと詳しい話はメールか帰ってから話す。ただ帰るのはまだすぐにはいかなくて」


「病院にいるのか、...まぁ何があったかわからねえが、気をつけて帰って来るんだぞ」


「うん。わかった、ありがと清一叔父さん」


電話を切りすぐに病院内に戻って行った、戻るとドクターが奏に質問をしていた


「九条さん。落ち着かれましたか、雪彦さんのご冥福お祈りします...それで御遺族の方なんですが」


「...私だけです。母は十年前に亡くなって、祖父も祖母も他の親戚も誰も」


虚ろな目で紡いだ言葉にドクターは戸惑いながら「わ、わかりました、とにかく今は後日また連絡致しますので、ご自宅に」


言い終わる前に奏は感情も無く「ありがとうございました」っとだけ言い力の無い礼をした。



空はすぐ奏に駆け寄りドクターに伝えた


「九条さんは僕が送ります」それを聞いたドクターはぺこりとお辞儀をし去って行った、


「九条さん。歩ける?」


「はい、大丈夫です...」生気を感じない反応に空は過去の自分を重ね病院前にあるバス停で、意を決して奏に話した


「九条さん。今は物凄く辛い気持ちだと思うけど」


そこまで言い呼吸をしなおし


「それでも今は家に帰ろう、気持ちの整理をつける為にも」


「...青街くん」


その言葉を聞き少し間があった後奏の頬を涙がまた流れた、


「僕の両親も幼い頃に亡くなってて、九条さんの気持ち全然わからない訳じゃないんだ」


「えっ」


「辛くて悲しくてどうにもならない感情が押し寄せて来る。」空の目は潤んでいた


「それでも、また歩き出す為に僕も支えるから」


その言葉を聞き奏は涙を流しながら


「どうしてそんなに、なぜですか?」


「それは僕も沢山の人に助けられて今を生きてるからだよ、九条さんがどんな人生だったのか僕はまだ全然知らない、それでも今辛い悲しい気持ちを抱えてるのは知っているから」


「う、うぅぅ」


「だから助けたい、今はお父さんへの気持ちを止めないで溢れて良いんだよ」


「うぅぅうぇーんううぅお父さん...なんで、どうして、一人は怖いよお父さん」


他には誰もいないバス停で奏は父への想いをひたすら言葉にした。



やがてバスが来る頃には先ほどより虚ろでは無くなり、少しなら会話が出来る程度になっていた


「青街くん。その、今日はありがとうございました、それと色々ごめんなさい」


「気にしないでください、それと謝られる理由は無いですよ」


「でも、もうこんな時間だしそれ以外にも沢山迷惑をかけています。」


「迷惑なんて思ってませんよ、ただ心配だっただけですから」


「優しいんですね。」


「そう言えば、敬語いらないですよ、僕のが学年下だし」


「えっ、でもそれじゃ失礼じゃないですか?助けてくれた人に対して丁寧じゃないのって」


「うーん。じゃあこうしましょうよ、学年下だけど僕も九条さんもお互い敬語禁止、どうですか?」


「敬語禁止...うん。お互いそれなら大丈夫かも」


「じゃあそれでこれから宜しく九条さん」


「わかった、よろしくね。青街くん」


そしてバスは住宅街に入り、二人は降りた、


「九条さん家ってここから近いの?」


「うん。十分以内には着くくらいだよ」


「そうなんだ、僕の家と同じで近いんだね。」


「うん。今日は本当にありがと青街くん。私一人じゃ多分もっと後悔して押しつぶされていた」


「ううん。僕は何も...それより家まで」


そう言いかけて奏は


「大丈夫だよ、私は大丈夫だから...だから今日は青街くんもお家に帰って、待ってる人がいるんでしょ?」


「それはそうだけど.....じゃあその代わりに連絡先交換しようよ」


「え?」


「何かあった時にそしたら話せるでしょ」


空が笑顔で語りかけると奏はぽかんとした表情を一瞬しすぐ「ありがと」っと笑顔で返した、そしてアドレスや電話番号を交換しお互い別れ言葉をかける。


「それじゃまたね九条さん」


「バイバイ青街くん」


奏はそう言うと歩いて行く、奏の右手は目の前で父を失ったショックで動かなくなっていた。

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