沼の向こうに繋がる明日は

「みなも、USDXのTRPG見た?」

「見た! プロ氏が初っ端からクズでたのしーデース!」


 みなもから沼に突き落とされてしばらく。当然うちはどっぷり浸かってしまって脱出不可能ですよね。ゲーム実況グループの「SDX」改め「USDX」にドカバマり中。本人たちの動画もそうだしファンアートも熱いなーって。

 うちとみなもは基本ジャンルかぶりがないけれど、うちがみなもから沼に突き落とされた場合は話が別。今はこうしてみなもがしたり顔なのを知りつつ喜んでズブズブになってるような感じ。玄関先でのおしゃべりが過熱する。

 うちはTRPG、テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲームっていうジャンルは名前を聞いたことがあったくらいであまりよく知らなかったんだけど、それを知らないなりに彼らの動画は面白い。


「GMバネ様、一歩間違えたら荒れそうだけどね」

「あれはねえ、それ以上にプロ氏がクズだからオッケーっていう風潮だよお」

「ゲーム関係ないプロ氏のウインクで全員にSAN値チェック入ったときはあーってなったもんねえ」

「プロ氏はいい声でクズだから困るよねえ楽しくて」


 教授、プロフェッサーでプロ氏はUSDXのキザなクズ枠。イケメン枠とも言えなくはないんだけど基本的にどうしようもない。だけどそれがいいと人気キャラの1人。全員人気ではあるんだけど。

 現実に存在する人たちではあるけど、彼らは既に「キャラクター」と化していた。みんなできゃっきゃと楽しそうにしてるのを見てるとこっちもきゃっきゃと楽しいから本当に困りますよね!


「今回のTRPGってバネ様の企画?」

「だねえ。何か、知り合いがシナリオ書く人で? レイ君て人」

「えっ、どこに書いてた? メルマガの方とか?」

「普通に書いてたよお」

「レイ君て新メンバー?」

「どうだろうねえ。TRPGシリーズには今後出て来るかもしれないけど。ほら、レイ君降臨希望コメも結構入ってるよお」


 その存在を示唆されただけでその姿形も声もわからないのにイラスト化するのが界隈ガチ勢の人ってすごいなーと思うワケです。GMのバネ様とシナリオライターのレイ君(仮)が残りメンバーを俯瞰で眺めてる絵とかがもう上がってるし。


「でもさ、やっぱりうちは揚々とチータを殺すバネ様が見たいワケで」

「かくれんぼとか鬼ごっこ系のゲームだねえ」

「チータの断末魔が軽く中毒ってる」

「チータはかわいいんだよお!」

「あっ、みなもが最推しを再度推そうとしてる。でもチータを介護してるコンちゃんがもっとかわいいとは言っとくし」

「ガソリン持ったチータが殺されたところにそれをひったくるプロ氏のクズっぷり」

「あっ、それこないだの「あ、こんなところにガソリンがー(はあと)」ってヤツでしょ?」

「プロ氏演技上手だよねえ」

「上手。いい声だから余計困るよね」


 すると、みなものスマホにポコンと通知が入るのだ。噂をすれば新作動画が更新されたというお知らせ。当然、うちもみなもも玄関先からパソコンの前に移動しますよね。


「あああああ新企画来てる!」

「えっ、えっ!? 絵師さんもう仕事してる!? レイ君来たー!」

「バネレイの枢軸オイシイデース!」


 歴史シミュレーション系ボードゲームの新シリーズが発進して、そこにTRPGシリーズのシナリオライター・レイ君が参戦するという展開。うちがUSDXに入ったのは最近だけど、ジャンルがぐわんぐわん動いてるのを感じるよね。

 しかもUSDXのキャラクターイラストなどを担当してる絵師さんがもうレイ君のアイコンを描いてたっていう仕事の速さ。公式から燃料が投下されたらもう大変。明日には二次の界隈が大変なことになってそうでうっきうきですね!


『貴様らの減らず口をプレッツェルで黙らせてやる』

『バネ君それリアルで押し潰されてるっていうプレッツェルの話?』

『……皆まで言うな。しかしビールのつまみとして有能だ。お前に物資として供給してやろう、3ケース程』

『多すぎ!』


 続々と燃料が投下されてるなあと。この種火がどう燃え上がっていくのか楽しみですね! うちはそこに作る側として参戦することはしないけど! だって怖いから仕方ないね!

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