晴れの日の花

「わー、Kちゃんきれーい。直クンもスーツスタイルでかっこいいねー」

「沙都子も綺麗だよ」

「うんうん。髪も綺麗になってるし」


 今日は成人式があって、地元での集まりなんかが終わった後でサークルのみんなと会うことになっていた。せっかくだから振り袖でも会いたいねーって話になって。Kちゃんの振り袖がバシッと決まってて綺麗だし、直クンのパンツスーツもカッコいい。

 Kちゃんと直クンは中学からずっと青女の付属校で、大学にもそのままエスカレーターで上がってきてるし家も近い。当然成人式の区割りも同じで今日も朝からずっと一緒なんだって。そこにあたしが合流する形で。


「直クンは振り袖じゃなかったの?」

「ちょっと、ボクは振り袖を着るのが恥ずかしくて」

「着とけばよかったのに。スーツなんかいつだって着れるでしょうよ」

「柄じゃないよ」

「じゃあ卒業式もスーツ?」

「そうなると思うよ」


 Kちゃんが言うには、パンツスーツで決めた直クンに女の子がキャアキャアと言っていたとのこと。大学でもよくある光景だからやっぱりねって思うくらいで驚きは少ない。直クンの振り袖の方がびっくりするかも。似合うとは思うけどね。

 卒業式だったらやっぱり袴だろうし、袴にはブーツかな、はいからさんスタイルで。振り袖や袴のために髪を伸ばす子もいるし、着たい子は本当に着たいんだよね。人生でそう何回もあることじゃないからかな。


「啓子の振り袖はレンタルなんだけど、沙都子のは?」

「あたしは自分の家で買ったんだー。1枚買っておけばうたちゃんも着れるし」

「そっか、うたちゃんいるもんね」

「うたちゃんは振り袖似合いそうだね」

「だから、一緒に選んだんだよ。うたちゃんはあたしの好きなのでいいって言うけど、やっぱりうたちゃんにも好きなの着てほしいし」


 姉妹で1枚買ってもらったのは、淡い緑で控えめな花柄の振り袖。たまたまだけど、うたちゃんと意見が一致したので特に揉めることもなくすんなりと決まって良かったなって。大学の卒業式でも着る予定です。


「もーう朝から着付けやら何やらで大変だったの。沙都子、アンタも美容院に並んだりしたでしょ?」

「髪は美容院でやってもらったけど、着付けは自分で出来るから」

「あ、そっか。それ沙都子の強みだわ」

「授業でやったからね」


 今は衣食住の食の分野を中心に勉強してるけど、衣の分野を中心に勉強していたときに着物のこともちょっと勉強した。簡単な浴衣くらいなら自分でも作れるし、そういう課題も出た。着付けも当然実技テストの評価対象。

 Kちゃんの話を聞いていると、早朝から本当に壮絶だったみたい。着付けをして、髪をセットしたらもう寝れないし、寝るにしても帯や髪を崩さないよう肩が凝りそうな姿勢での仮眠しか出来ないそうで。

 その点で言えばスーツで髪もいつも通りの直クンは準備に時間もかからなかったそうで、睡眠時間もばっちり確保出来たって。あたしも髪だけで着付けに並ぶ時間がなかった分、朝のバタバタはそこまででもなかったかな。


「あっ、直クンコサージュつけてくれてるんだー」

「うん。元々ステージで映えるような花だし、こういう場でもつけたいなと思って」

「アタシも髪につけてる」

「わー、ありがとー、嬉しい」


 植物園ステージの時に衣装の飾りとして作った3人お揃いのコサージュ。打ち合わせをしたワケでもないのにみんなつけてくれてて本当に嬉しい。あたしとKちゃんは髪に、直クンはスーツの胸元に。


「そうだ、後から3人で写真撮ろうよ。せっかく2人が振り袖で綺麗だし」

「直の提案には賛成だけど、どんな理由」

「うん、写真撮ろう。あたしもお母さんたちに見せたいし」

「ありがとう。そうだ、神社にでも行く? せっかく振り袖だし」

「直、アンタさっきから振り袖振り袖って。アンタもホントは着たかったんじゃないの!?」

「別にそんなことは思ってないよ!」

「どうだか」

「だって、女の子が綺麗にして笑ってるのっていいじゃない」

「直、アンタ女で良かったね。する人がしてたら捕まってるよ今の」

「圭斗先輩ならナチュラルに言ってそうだけど」

「……あー、やめて。野坂が脳内に湧いてくるから」

「あっ、もう向島の成人式もニュースに出てるよ。映像は青浪だってー」

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