絶対的な恋人が欲しい!
「対策委員です」
――とは言っても急ぎの用事があるワケではなく、今の議題は今後の予定の確認と、各大学の情報交換が主になっている。
「彼氏が欲しいんですよねー」
「突然どうした、果林」
「ううん、彼氏が欲しいなーと思って。あっ、でもご飯残す人は論外だし箸の持ち方はしっかりしててほしいし、お酒飲みながら焼き鳥食べる系のデートとかしたいしさ」
「それって別に彼氏じゃなくてもよくない? 居酒屋焼き鳥デートとか、アタシ朝霞サンと腐るほどやってるけど」
「彼氏だと好きっていうのが前提だし、何か特別に理由がなくても会っていいかなって感じするし」
「うん、それも別に彼氏じゃなくても、気の置けない友達でオッケーだね」
「つばめは相変わらず恋愛の話になるとバッサリ行くね!」
クリスマスも近いからか、浮き足立っている奴は浮き足立っている。べっ、別に俺はソワソワしたりしてないんだからねッ! それはそうと、彼氏彼女の話題となると、不特定多数のカボチャどうこうではなく菜月先輩のお顔が浮かんでしまうのだ。
俺はいい加減言うことを言ってしまわないといけないとは思っているのだけど、なかなか踏ん切りがつかず。お慕い申しておりますというそれだけが何故言えないのだと。何かが告白フラグを粉砕してくるんだよなあ、それが何かはわからないけど。
果林の言うそれは確かに彼氏という存在でなくても何ら問題はなかった。ただ、気の置けない友達はいつ誰に奪われるかわかったモンじゃない。だからもう一歩踏み込んでおいた方が安牌なのだろう。あれっ、都合良く使おうとしてるだけに見えるな。
「あんまり彼氏欲しいからって手近なトコでは済ませたくないし、かと言って合コンとかも嫌だわ」
「つばめってそゆトコシビアだよね」
「だって近すぎると気持ち悪くない? だって知り合い同士のカップルとか、良くも悪くもやってることを周りが妄想すんだよ。そんであることないこと陰で言われるとかなくない? 付き合うなら絶対共通の知り合いが少ない方がいいわ」
見に覚えがありすぎて反省するしかない。圭斗先輩が少し前に彼女さん(今では別れたけれども)との愛に溢れた生活の話を聞いてあることないこと妄想していたのは他でもない俺だ。だって圭斗先輩の愛に溢れる生活とか尊すぎるだろ。
「実際どーゆー人がモテるんやろね。ねーねー、女の子らは今ここにおる男子の中で彼氏にするなら誰がええとかあるん?」
「ゴティですよねー」
「敢えて言うならゴティかな」
「うん、ゴティだろ」
「まいったなー、みんなありがとー」
「――って何でみんな即答すんの!」
まあ、俺とヒロとツカサだったらゴティのコミュ力と優しさ、それから思いやりみたいなところが圧倒的だしなあ。あと、俺とツカサは多分偏屈じゃないけど、あからさまな理系っぽさがネックになってる気がする。言い訳だけどな!
いいんだ、不特定多数のカボチャたちにどう思われようとも。俺の想うたった一人の方に認めていただければ……偏屈理系男と呼ばれてしまっているけれどもだ! でっ、でも、少しずつだけど頼っていただけているみたいだし、もっと頑張らないと!
「果林はゴティの何が良かったん」
「ゴティは彼氏でも優しそうだもんね。お金にもしっかりしてるし車あるし、趣味もアクティブだから楽しそう」
「つばちゃんは」
「ゴティがいいと言うかアンタらが論外」
「Kちゃん!」
「絶対的な評価と言うよりは相対的な見方になっちゃうよね、この中で誰がいいっていう選択式だと。アンタたちもそうでしょ? アタシたち3人の中で誰を彼女にしたいかって聞かれたら消去法になると思う」
「ボクは消去法でなしにKちゃんがええよ」
「はいはい」
結局、彼氏彼女云々については誰も何の動きもなさそうだし論外と言われた俺たちが無駄に傷ついて終わった。俺はまだ人を冷やかしてゲスい顔をしているくらいが丁度なのだろうか。いや、言うことを言ってしまいたいのだけど。うーん。
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