夏は大味、チェックポイント

「あっ、いたいたー! さっちゃーん!」

「あー! 慧梨夏サーン!」

「……黒っ! さっちゃん焼けたねえ、誰って感じだよ」


 今日は向舞祭の2日目。緑大の向舞祭チームに参加していたさっちゃんの激励……と言うにはタイミングはちょっと遅かったけど、メインステージで行われるセミファイナルまで進んだのはすごい。

 えっ、うち? 今日は東都でイベントに参加して、そこから帰って来て現在に至ってますよ。向舞祭にはカズも音響スタッフとして出てるし、ちょっとだけ興味があったんだよね。本当はカズが音響やってるところを見たかったけど。

 大通り公園のメインステージには、星港の人という人がみんな集まってるみたい。さっちゃんとの会話も声を張らないと全然通らないし。コミフェで体慣れててよかったー!


「もー、三浦は疲れました」

「ずっと踊ってたらねえ。お疲れさま」

「でも聞いてくださいよ!」

「ん?」

「ちょっと前からテレビ局の企画で三浦はプチ密着されてたんですよ!」

「えー! すごいねえさっちゃん!」


 緑ヶ丘のチームは体育学部やダンス部の子が主体となっていて、チアリーダーの子たちがアクロバティックな動きを見せたり、とにかく高い身体能力やらなんやらがウリ。その中で体育学部でもダンス部でもないさっちゃんが異色だったようで。


「それでさっき水鈴ちゃんと話したんですよー!」

「えー! いいなー!」

「いいでしょー」


 水鈴ちゃんていうのは夕方の情報番組でコーナーを持ってる現役女子大生タレントの岡島水鈴ちゃん。背が高くて目鼻立ちのはっきりした美人。恋愛に対してもオープンスタンスでさっちゃんから人気だし、うちも好き。

 どうやらそのプチ密着の関連でさっちゃんは水鈴ちゃんと話す機会があったみたい。踊ってみるモンですよと鼻息を荒くしたさっちゃんは、そのときの様子を語ってくれる。


「それで三浦は水鈴ちゃんにちょっと振りを教えて、一緒に踊ったんですよー2小節だけですけど」

「えー、それいつやるー!?」

「明日の向舞祭総集編って言ってました」

「録画しとかなきゃ」


 照明で照らされるステージを見上げると、アシスタントとして進行のお手伝いをする水鈴ちゃん。確か1年目だったはずだし、さすがにメインMCではないのか。


「それでですね、向舞祭ってサテライトステージが散らばってるじゃないですか」

「さっちゃんも2、3ヶ所行ったんでしょ?」

「そこでMCやってた人がイケメンだったんですよ! どこのステージ行ってもイケメン!」

「ちょっとさっちゃん画像はー?」

「ないっす!」

「もしかしたらカズの友達いたかもなーその中に」

「えー! かれぴっぴさんの友達ってことは慧梨夏サンの友達じゃないですかー! いいなー!」


 カズの友達だったらうちの友達になるということではないと思うけど、知り合う可能性はゼロではないからきっぱりと否定することもしない。何か、うちの話って結構カズの周りには伝わってるらしいし。

 学生スタッフとして派遣されてるのは、MCと音響。カズは音響だけど、友達は大体MCの方だって言ってたから。何か、炎天下で死にそうになってる子がいたりして大変だーとか何とかって話は聞いた。


「楽しかったようで何より」

「でももう夏が終わっちゃったじゃないですか!」

「GREENsのイベントはまだまだ残ってるからね」

「えー! 本当ですか! 何やるんですか!」

「バーベキューもあるし、花火もあるし、練習試合もあるし」

「練習試合は、うーん……」

「バスケサークルだもん、たまには試合もしないと」


 まだまださっちゃんは真っ黒なままだろうし、うちもイベントの企画にアンソロの原稿にと忙しい。夏休みは折り返しを迎えたばかり。実際最近ずっと暑いし夏でいいよね。


「慧梨夏サン、かれぴっぴさんから向舞祭に来てた友達の画像もらってください」

「さっちゃん必死だね、いいけど」

「イケメンは目の保養なんですよ! イケメンと付き合ってる慧梨夏サンにはわかんないんですよ!」

「……うん、まあ、確かにカズは三次元でトップクラスだけどさあ」

「くーっ! 惚気ですよ! 水鈴ちゃんは可愛いのに慧梨夏サンだとくーってなるのは何故! 三浦もらぶらぶしたい!」

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