パねえって言いたいだけのヤツ

「あー、もーイヤやー! 何でテストなんか受けんとアカンのー!」

「諦めなさい、そういうものなんですから」

「そーゆーモンとしか言いようがないスわ」

「ノサカはどーせまたオールSなんやー!」

「まあ、野坂さんですし」

「ダブりそうなヒロに付き合ってやってる聖人じゃないスか」


 向島大学でもテスト期間の真っ最中。インターフェイスの大学でも今期は何故か1週遅いらしい星ヶ丘を除く私大組がもう夏休みを謳歌していたりして実に羨ましい限りですね。

 特に私たちは2年なので履修がまだ減るという段階ではありません。MMP2年がたまたま一緒になった学食で相席をしてみたものの、ヒロさんがまあいつものように大騒ぎしてますよね。ちなみに野坂さんはじゃんけんに負けたのでパシりです。


「こーたとりっちゃんはどーしてそんな余裕なん」

「文系と理系は比べるモンじゃないスよ」

「間違いないですね。社会学部には2年での足切りはありませんし」

「何でやの、意味わからんわ」

「社会学部は名前こそ社会学科しかありませんけど厳密にはコースがいくつかに分かれていて、そのコースごとに主な講義の発生する学年が異なるんですよ」

「自分と奈々は現代社会コースでこーたは市民福祉コース、菜月先輩と三井先輩はメディアコースっつって、一言で社学っつってもみんな厳密には違うンすわ」

「へー、そーなんや」

「菜月先輩が去年余裕ぶッこいてたのはメディア系の講義が3年にならないとなかなか出ないってンでああだったンすわ」


 すると、菜月先輩という単語が呼んだのか、ちょうど私たちにパシられていた野坂さんが戻ってきましたね。頼んでいた飲み物と人数分のお好み焼きを手に。


「今、何の話?」

「ヒロが何で自分らがそンな余裕なんだッて言い出したンで、社会学部の仕組みについて少々」

「そんなんええからノサカ早く配給してよ」

「はいはい。えーと、律がコーヒーで、こーたが桃ソーダ。カルピスは俺で、ヒロはレモンティーだな」

「ボクやっぱカルピスがいーんやけど。ノサカ交換して」

「意味がわからない」

「ノサカレモンティーも好きやろ! はい交換!」


 ヒロさんはさすがですね。野坂さん相手にはやりたい放題。きっとこんな風にしてノートや授業中の課題なんかも搾取してきたんでしょうね。

 お好み焼きをつまみながら、社会学部の仕組みやMMPメンバーの履修事情などについても少々。テストの合間とは言え、このメンバーで勉強が出来るはずもなく。そもそも、そんな目的で集まったワケでもないので。


「ところで、菜月先輩って来てるんですか? 履修コマ数の割に見かけませんけど」

「そりゃァお前、コースが違うんだからそうそう教室なんざダブらねーだろーよ。自分は結構見ますケドね」

「菜月先輩は記述式のテストなら基本30分で退出されるそうだから、しっかり粘るこーたなら余計会わないはずだ」

「さすが野坂さん、菜月先輩のことをよくわかってますね」

「あァー、それで自分やたら菜月先輩と会うンすか。謎が解けヤしたわァー、ハハァー」

「ねえノサカボクやっぱレモンティーがいい。カルピス甘い」

「知るか! 自分で買って来い!」


 やっぱりヒロさんが自由だし、野坂さんはそれに巻き込まれてナンボ的なところがありますね。しかもカルピスを3分の2は飲んでから交換するとか言い出す辺りがさすが過ぎますよ。


「ところで、夏合宿ってどうなってる? 班の打ち合わせとか」

「自分らは至極順調スわ」

「4班には聞いてない。こーた、お前は」

「私個人の事にはなりますが、なかなか強烈な子の相手をすることになりましたよ」

「お前が強烈とか言えた立場かよウザドル」

「お黙りっ! イケメン詐欺! ヒロさんはどうなんです? 班長としてやれてるんですか?」

「7班はね、マジパないよ」

「よくわかりませんね」

「多分ヒロは真司に感化されて「マジパねえ」って言いたいだけのヤツだから」


 そして始まるのが番組の話なので、やっぱりそこは放送サークルですね。ヒロさんは「マジパないからまだわからん!」とのことらしいですが。

 テスト期間を抜ければいよいよ本格的に夏合宿の準備が始まるんですよ。特に私たちは向島だからというだけの理由でかけられる期待や重圧も大きいので、いい風に働かせたいところですね。まあ、その前にテストですが。

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