水と重曹
「どっこいせ。はー、重いなー」
「溜まったねえ」
洗濯物の部屋干しをするときに大活躍する除湿器。そのタンクに溜まった水が重い重い。風呂場に持って行って捨ててるけど、結構な量の水だ。
ばっしゃんばっしゃんと口から水が排出されていくと、排水口も物凄い音を立ててその水を処理していく。その音は部屋で作業をしている慧梨夏にもしっかり聞こえているようで。
「ねえカズ」
「ん?」
「その水さ、何かに使えないのかな。お風呂の水だって洗濯に再利用したりするじゃん」
「あー、どうだろうな。考えたことなかったけど」
慧梨夏の言葉に、考えを巡らせる。確かにタンク一杯の水があれば結構なことが出来るはずだ。ただ、飲用水にする度胸はないのでそれは選択肢から抜くことにして。
一応、独断で再利用するのは危ないので慧梨夏と一緒にネットで調べてみることにする。すると結構な数のQ&Aが出て来て、みんな思うには思うことなんだと知る。
「あー、やっぱ飲むには向かないか」
「水をやるような植物も育ててないしね。トイレか打ち水かってトコだね」
「辛うじて洗車に使えるかなって程度みたいだな」
「あ、そう言えば洗車なんて全然してないや」
花粉と黄砂の季節を抜けて、慧梨夏の車も大分表面が薄汚れたように思う。もちろん、俺のバイクもだ。もう少し早く調べてたらさっき流した水で洗車が出来ただろうに。残念だ。
「じゃあ、次水溜まったら洗車するか」
「うん」
とりあえず、今は申し訳程度にヘルメットを磨くのだ。うっわ、きったねえ。やっぱたまに磨かないとダメだな何でも。ちょっと被ってみると視野が全然違う。めちゃキレイだ。
何か、ちょっと気にしてみるといろんなところが汚いんだよな。いや、掃除をしてないってワケじゃない。どっかツメが甘いって言うか。この勢いで今日は掃除の日にしてみたくもある。防カビとかさ。
「よし! 慧梨夏、掃除するぞ!」
「えっ、今から?」
「今からだ」
そうとなったら各種クイックルたちを準備するのだ。さすがに俺の部屋じゃLみたくガチな掃除は出来ないから、いつもよりちょっと気合を入れる程度になるんだけど。
フローリングを拭くクイックルワイパー、埃を取るクイックルハンディ、それからトイレクイックルも。それらは慧梨夏にお願いして、俺は風呂掃除。
この時期だし、カビ対策は必須。湿気と栄養になるようなモンを残すなってこないだテレビで言ってたし、一連の掃除が終わったらしっかり水気を拭きとらないと。
あっ、どうせなら洗濯槽の掃除もやろう。Lは部屋の掃除はバカみたいにすんのに洗濯槽は気にしたことないとか言ってて正直ドン引きしたよな。洗濯槽は大事だろ!
えっと、重曹はあったかな。あっ、その前に今日の洗濯は……いや、洗濯槽の掃除をしようっつってんのに回すのはちょっと気が引ける。洗濯は明日にしよう。えっと、重曹重曹。
「カーズー」
「どうした?」
「ベッドの下からこんなの出てきたんですけど。何するつもりだったんですかねえ」
「わーっ! 見た?」
「ばっちり」
「見られたからには仕方ない。後で使うわ」
「カズのそういうところが潔いよね」
大人の事情でお見せすることは出来ないんですけど、まあ、そういうモノです。まあ、バレたならしょうがないんで、掃除が終わったら使いますよ。慧梨夏も覚悟は出来ただろ。
シーツを洗うのも明日だ明日! 今日は洗濯槽の掃除が最優先! 重曹でやるときは一晩おかなきゃいけないんだもんな。重曹って結構何でも使えるけど、漬け置きの時間が長いんだよなあ結構。
「クイックルやってるだけなのに掃除してるって思ったら全身埃でドロドロになった気がする。シャワーしたい」
「あー、そうだな。パイプ掃除やろうと思ってたけど、それも全部終わってからにするか」
「えっ、別にいいんだけど、なんでエッチしてから掃除に戻ろうって思うの?」
「でもパイプ掃除はやっとかないと」
「何かもうさすがすぎる」
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