ナノスパ＠2017 -one's routine life-

らぶいちゃオートマチック

「はーああ」

「尚ちゃん先輩溜め息長いっすよ！」

「三浦、お前に聞くだけムダだろうけど、お前、彼氏いる？」

「いないっす」

「じゃあ、男の気配は？」

「ないっす！」

「ほらな。あー、彼女ホシー！」

　尚サンのどデカい溜め息の原因は、彼女欲しさから。尚サンは男としてはかわいいナリをしながら中身はしっかり男と言うか、むしろおっさんなんじゃないかという疑惑が浮上している。

　そして彼氏はいるのかと聞かれた三浦も彼氏欲しいなーと喚き始めた。もちろん、それをここで喚かれたところで誰にもどうにも出来ることではなく。俺も彼女はいないけど、現状で欲しいとは特に思っていない。

「俺さあ、大学に入ったら自然と彼女が出来るモンだと思ってた」

「わかるっす！　彼氏って勝手に出来ると思ってました！」

「お前は１年だしまだこれからじゃん？　俺なんかもう２年になっちまってこのザマだ！」

「尚ちゃん先輩はしょーがないっすよ。だって女の子よりかわいいじゃないですか。一緒にいたら自信喪失するんじゃないです？」

「あー！　やっぱそうかー！　可愛いって罪だなー！」

　可愛いって罪だというのは間違っても男が言うことではないなと思いつつも、このGREENsというサークルでは誰もそれをツッコまない。何故なら尚サンはかわいいものとして全員から認識されているからだ。そして本人もそれを自覚している。

「尚ちゃん先輩は彼女は自分より背が低い方がいいんです？」

「背は特にいいかなー。敢えて言えば巨乳がいい」

「おっぱいと言えば慧梨夏サンすね！」

「あー、いいね！　あの人はあのムチムチ具合がめっちゃイイ！」

「尚ちゃん先輩怒られるぞー」

「俺は小悪魔的な言動でムチムチの巨乳をこれでもかとわしづかんで、さらに上目遣いで彼女を殺してやりたいんだ！」

「いえーい、巨乳でない三浦セーフ！　尚ちゃん先輩の毒牙にかからずに済んでセーフ！」

「巨尻でもいいけどお前はどっちもちげーな。三浦セーフ！」

　その言動が尚サンに彼女の出来ない原因ではないかと思うけど言わない。欲望と言うか、煩悩がダダ漏れじゃん？　そしてそれにノる三浦も三浦で彼氏など到底出来そうにないと俺は思う。

　尚サンのかわいい見た目からおっさんのような言動というギャップにときめく女子でもいれば話は別だけど、狙った獲物の前ではあくまでも可愛い尚サンで居続けるだろう。この人はあざといくらいがちょうどいい。

「つか、大学に入ったら自然と彼氏彼女が出来ると思ってたって、それって大人になったら自然と就職して自然と結婚すると思ってたっていうのと同じ次元の話じゃん？」

「うるせーくげ！　ンなこたわかってんだ！」

「そうだそうだー、現実を突きつけないで！」

「非現実的だとはわかってたんだな」

「だって～、慧梨夏さんの話聞いてたら羨ましくて～！　三浦も未だ見ぬかれぴっぴさんとラブラブいちゃいちゃしたい～！　し～た～い～！」

「俺もラブラブいちゃいちゃし～た～い～！」

「じゃあお前らが付き合えばいいんじゃん？　適当なトコで手打って」

「いや、それはねーよ」

「うん、ない。鵠沼クンそれはないよ」

　そして尚サンと三浦はそれぞれ彼女欲しいな、彼氏欲しいなと喚き始めた。大学に入ったら勝手に出来ると思っていたとはどういう理由からなのか。世界が広がるとか、知り合いが増えるからみたいなことか？

　何にしたって自然に発生することはない。もしそういうことがあるとするならば、自分から出会いの幅を広げていった人格者でそういうケースが多かったとかそういうようなことじゃないかと俺は思う。

「くげ、ところでお前はどんな女がタイプなんだ」

「いや、特に考えたことは」

「なんだよつまんねーの！　じゃあ三浦と付き合えばいいんじゃね！」

「いや、ないっす」

「ひどー！　かわいい三浦を捕まえてひどー！」

「お前のどこが可愛いんだ」

「わーん！　鵠沼クンが三浦をいじめるー！」