Pattern of the 3rd year

「菜月、そろそろ昼放送のペアを決めようと思うんだけど」

「そうか、そうだな」


 MMPでは、通年の活動として食堂での昼放送がある。去年の春学期までは生放送をやれてたんだけど、夏休みに食堂事務所の機材が変わってから収録放送の形で事前に録った30分の番組を流させてもらっている。

 正直、昼放送とインターフェイスの活動があるからそれなりにやってる風に見えるけど、実際通常のサークルで何かをやっているのかと言えば……うん、その辺はお察しだけど、やってるにはやってるから。


「一応みんなからもらった履修表があるから、これを元にいくつか組み合わせてみたんだよ」


 昼放送のペア決めにはいくつかのポイントがある。ひとつは、収録のタイミングが合うこと。これは当然、そのままだ。収録に必要な時間を合わせることの出来るペアでないといけない。講義で言えば1コマ分、90分もあれば大抵の場合は何とかなる。

 もうひとつ。これは主にミキサーが重視される項目になるんだけど、昼休みに時間が取れること。昼休みは2限と3限の間だ。主にミキサーが番組を流しに行くことになるからどちらかのコマが空いている方がいいだろうという配慮。


「……しかしまあ、よく組んだけど極端だな」

「仕方ない。だからこそ菜月に意見を求めてるんだ」


 圭斗から受け取ったいくつかの組み合わせ案は、とても極端だった。最大で3ペア出来る案と、出来て1ペアの案と。どうしてこんな極端なことになるのかと言えば、ペア決めに関する最後のポイントが大きく関わってくるからだ。


「組んだことのないペアという条件が付くと、全く予定が合わないという事態が発生してね」

「しかし本当に酷い」

「ペア経験の有無を度外視すれば、MMPとしては週3の活動を確保出来ていいんだけど、どう思う」

「うーん、この際別にいいんじゃないか? 7人だぞ。組んだことがあるないを気にしてたら活動にならない」

「ん、菜月ならそう言うと思ったよ。ところで、理系の2年はどこを取っても昼に余裕はなさそうだから、菜月の希望で曜日を決めるよ。どこがいい」

「火曜日だ」

「落とせない授業があるんだな」

「言ったか?」

「付き合いも3年目になるとね、何となく考えていることがわかってくるものだよ」


 うちの相方ミキサーが2度目のペアとなるヘンクツ理系男だと分かったところで、収録の曜日もまた土曜日になるのだろうなとはうっすらとした予感。去年の感じを見ていると、例によって収録が数時間単位になるだろうから。


「そうとなったらこのペアを発表して、僕は食堂に挨拶に行かないといけないね」

「フェア情報ももらって来いよ」

「ん、わかってるよ」


 手帳を開いて火曜日の欄を数えれば、初回放送は5月2日か9日か。まあ、収録の都合もあるから9日だろう。

 ゴールデンウィークに実家に帰る予定はないからいつでも収録出来るし、まずはゆっくりトークを練ろう。初回から五月病の話なんかにしたらアナウンス部長サマがウルサいだろうしな、どうする。


「ところで、ペアを決めた結果三井が余ったんだけどどうしたらいいと思う?」

「アイツはやっていいって言ったら勝手にマルチでやるだろ」

「それもそうか。アイツの自主性にまかせよう」

「何だかんだ言い訳してまずやらないだろうけどな」

「ん、よくわかってるね」

「付き合いも3年目だからな。行動パターンも何となくわかってくる」


 とりあえず、2週3週先のことも考えつつ、だな。いよいよ本格的に始まるなって感じがする。昼放送がないと曜日の感覚が掴めないし、大学に出て来る強い理由がなくなるし、何気に大事なんだ。


「さて、僕はりっちゃんとペアを組むことになったけど、どうしようかな」

「りっちゃんならどうとでもなるだろ。と言うか後輩に投げっぱなしとかいう可哀想なことはしてやるなよ」

「ん、僕もりっちゃんならどうとでもなると思ってるからね、自然体でやらせてもらうよ」

「……自然体? つまり、投げやりで巻きまくりかつ逆キューの嵐、ミキサー泣かせのゲインマックスか?」

「改めて言われると僕はなかなか酷いアナウンサーだね」

「やっと自覚したか」

「まあ、3年目だし今更しょうがないね」

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