第24話 クラウンステーションワゴン・スーパーサルーンエクストラ2.4D
前々から思っていたこと。
クルマが狭い!
通勤とか、陽と二人で出かけるのであれば今のクルマで十分なのだが、家族全員となると無理。家族構成は祖父母、両親、陽なので、完全に定員オーバーだ。
そんな時は父親のタウンエースノアの出番となる。
趣味の方面から考えても決して十分な室内の広さとは言えない。
長ザオが欲しいのだが、この室内の広さでは、7.2フィートのアルディートを斜めに積むのがやっと。それ以上になると2ピースしか選べない。それに、二人分のサオを積むとなると、助手席の人が相当窮屈な思いをする。葉月くらい小っちゃければ、まだなんとかイケるが、メインで釣りに行くのは克洋。長身でガッチリした体格だから、長距離移動は拷問だ。
ま、そんな場合は克洋のクルマ(2代目カルディナ2.0G)を出してもらうことになるのだけれど。
エッセは好きで買ったクルマだから手放したくはない。これはこれで末永く可愛がっていきたいという気持ちがあるのだ。
駐車スペースにはまだまだ余裕がある。
ここは田舎で笹本家は地元の人間。しかも農家だから家は広い。
そして、元嫁は無駄遣いせずに金を貯めてくれていた。少々の新車を買うくらいの金額はある。
それならば。
もう一台、趣味に使えて人もたくさん乗れるデカいクルマが欲しいよね!
というわけで、離婚後初めて大きな買い物を決意する要であった。
週末、早速陽と一緒にクルマ探し。
隣町のトヨタの中古車センターへ。
初めてのクルマ屋に陽は大はしゃぎ。降りるとすぐにどこかへ行ってしまう。
向こうの方で無人(に見える)のクルマのドアが勝手に開閉している。
ひとしきり見て、触って満足すると、今度は、
「おとーさん!あっちにカッキーのがあったばい!」
手を引っ張って連れて行かれる。
そして、
「これこれ!86!」
スポーツカーっち…。
たしかにカッコイイ。乗ってみたいとも思う。買おうと思えば買えるのだけれど。
乗れる人数は今と変わらないし、使い勝手がさらに悪くなる。
今買うのはこれじゃない。
「陽…今日はコレやないぞ。みんなが乗れるクルマ買いに来たっちゃき。」
「え~。ボクこれがいーのになー。」
「今日はダメ。それは陽が大人になって買いなさい。」
「分かった。じゃ、他の探す。」
名残惜しそうに86を見つつ、再び展示してあるクルマの群れの中へと消えていった。
ガラガラガラ…バタン。
スライドドアの音。
目を移すと200系ハイエース。
無人で開閉しているから陽だ。
今度は運転席のドアが開き、一生懸命よじ登っているのが見えた。
ヤバイ!他の客にドア当ててケガさせたり、隣のクルマに当てて傷つけたりしよるかも。
心配になり駆け寄る。
近寄ると、十分にスペースが開けてあり、そういった心配はない。客もいなかったため、とりあえず安心した。
運転席に座り
「こぉ!おとーさん!高いばい!」
はしゃぐ。
目線が高いのでエッセよりも景色がいいのだ。
「おう。知っちょーぞ。それ、おとーさんの仕事のクルマと同じモンやき。」
「そーなん?これやったかね?」
今、いじくりまわっているのはスーパーGLの黒。仕事のクルマは白のDX黒バンパーなので、雰囲気がかなり違う。陽も会社のクルマは何度も見たことがあるし、乗せたこともあるのだけど、内装からして全く違うので、同じものと認識できてないようだ。
そっか。ハイエース。これなら税金も安いし荷物いっぱい積めるな。でもスーパーGLっち5人乗りやんなー。軽とあんまし変わらん。買うならDXやな。6人乗れるき、それにするかな?
今後の参考にするため、このクルマの詳細と値段を見てみることにした。
Ⅲ型スーパーGL。
3リッターターボディーゼル。
4年落ち。
走行10万キロ。タイミングベルト交換済み。
250万っち…おい!なんじゃそりゃ!コレ、中古ぞ?マークXの新車買えるやんか!
ビックリだ。目線以上に高かった。
ソッコー却下した。
このエリアはワンボックスやミニバン、ワゴンのコーナー。
隣に置いてある200系レジアスエースⅢ型DX銀。
黒バンパーでショボイフェンダーミラー付。
同じく3リッターターボディーゼル。
5年落ち。
走行15万キロ。
値段は…180万。
やめた!200系は無し!コレ買うなら新車。
なら、キャラバンは?
E25とE26が展示してある。
E26はどーだ?
デビューして間もないため、高額だと分かっていて値段を見てみる。
やっぱし。
これも新車を買った方がよさそうだ。
却下。
じゃ、E25は?
200系と比べると走っている数が圧倒的に少ない。ということは不人気なわけで。安いんじゃなかろうかと期待するものの…全くそんなことはなかった。ハイエースよりは若干安いものの、こんなの誤差の範囲でしかない。
却下。
ガソリン車ならば…ディーゼルよりは安いものの、やはり高くてお買い得感が全くない。
燃費を聞くと2リッターは街乗りで5キロ。2.7リッターも同じくらい。思ったよりも悪い。これもまた躊躇する原因。
広大な室内は非常に魅力的なのだが、程度の割に高額すぎる。
デカいワンボックスは中古選びの候補から外した。
移動。
日産の中古車センター。
いきなし目に付く軽自動車のワンボックス。
先程、デカいサイズのワンボックスばかりに目がいって、忘れていた選択肢。
ここにきてやっと気づき、それを中心に見てまわる。
ハイゼットバン。
詳細を見てみると、ターボの4WDで5MT。
5年落ち。
走行5万キロ。
コミコミ80万。
新車の値段から考えると、やはり軽自動車は割高感が強い。これ買うなら新車買う。
特にハイゼットはダイハツだから、エッセを買った店で買えば割引も大きくなるはずなので、ここでは現物がどんな感じであるかを調べるだけにした。
普通車はというと…この日の品揃えはパッとしない。
便利さと値段で決めるのならウイングロードやノートなのだろうが、グネグネしたボディラインが気色悪くて生理的に受け付けない。
これらの車種を見て、カローラフィールダーとプロボックス、サクシードのワゴンを思い付くが現物が無い。
マジで、いいと思える品が無い。
強いて言うならば、セレナ?エルグランド?そんなところだが、イマイチ「好き」が足りない。ここで妥協してコイツ等に決めてしまうと、すぐに飽きて次を買うことになり、さらに出費が増えてしまう。
過去にやっちまったコトを思い出し、手を出さないことにした。
さらに見てまわる。
と、ここで、
!
かなりトキメククルマ発見!
Y31セドリックセダン!
ハイヤー上がりのガス車で色は紺色。
たしかこれ、6気筒と4気筒があったはず。
ボンネットを開けてみるとVG20E。V6なのである。
高級車じゃないですか!
Y31のVG20Eは125馬力。ガス車は1割ほどパワーが落ちると聞いていたので110馬力ぐらいか。コラムオートマチックなので6人乗ることができる。航続距離は乗っている人が身近にいないため、心配になるポイントではあるが、ガススタンドは近くに数件存在するから燃料には困らないはず。
よし!これにしよう!
値段を見てみると、ついていない。
店員に聞いてみると売約済み。
ちょうど札を用意しているトコロだった。
一足遅かった。
残念…。
この日のクルマ選びはここでおしまい。
少し間を空け、ある程度入れ替わった頃、また探すことにしよう。
そして一カ月後の週末。
陽は遊びに行ってしまった。
一人で回ることにする。
前回行ったトヨタの中古車センター。
結構な台数入れ替わっている。
値段の傾向は分かったつもり。
それでもデカいサイズのワンボックスは捨てがたい。イチオー見てみることにする。
すると。
展示場の端っこに、ベージュツートンの100系ハイエースワゴンが置いてあるのが見えた。
近寄ると、前が長くオメメパッチリなので最終型。5ナンバーだから3リッターターボディーゼル。
ということは!
名機1KZ-TE搭載車だ。
以前、このエンジンを積んだハイエースのレンタカーに乗る機会があったのだが、あの暴力的な加速は感動ものだった。あれが味わえるのなら少々高くても、税金一割増でも、走行距離が多くても関係ない。文句なし、これに決める。
グレードを見てみると、なんとスーパーカスタムリミテッド。最上級グレードだ!
いーじゃないの!これに決めた!
前に回り、値段を確認すると…これまた売約済みの札。
ガッカリだ。
ことごとくタイミングが合わない。
軽のワンボックス、新車で買おうかな。
今からダイハツにでも行くのがいいかもね。
抱き枕もボロっちくなってきたし、まだくじ引きありよるかな?
とりあえず、もうチョイ見たら出よう。
なんとなく、ホントになんとなく足を運んだ現状販売のコーナー。
ん?
一台のクルマに目を奪われる。
銀色の130系クラウン。
横に置いてあるボロボロのボンゴバンに隠れ、ボンネットしか見えていなかったため、セダンかと思った。
近寄ってみると…。
これ、ステーションワゴンじゃないの!
しかもグリルについているバッジは「スーパーチャージャー」ではなく「D-TURBOセラミックパワー」(パッと見似ている)。2L-THE型ディーゼルターボ搭載車だ。ガソリン車がメインの車種なのでかなり珍しい。フロントガラスに売約済みの札は無い。
中を見てみることにした。
が、鍵がかかっているため見ることができない。
店員を呼びとめた。
「すんません。あのクラウンのワゴン、売り物ですよね?」
「はい。そうですよ。」
「中見てみたいんですけど、いーですか?」
「はい。ちょっと待ってくださいね。キー持って来ます。」
そう言うと店員は店内へと入っていった。
間もなくキーを持って戻ってくる。
キーを鍵穴に突っ込み回して開ける。
平成元年式のクルマなので、勿論キーレスエントリーなんか着いちゃいない。集中ドアロックのみ。
運転席に座ってみる。
内装色は濃い青で、落ち着いた雰囲気。
デザインは昔感溢れまくりだけど、そこは流石クラウン。しっかり高級車している。
シートは意外にも硬い。背もたれや座面が分厚くシッカリしているので長距離乗っても疲れにくそう。
それにしてもスイッチ類が多い!
エアコンは温度調整を除き全てボタン。
天井を見るとサンルーフ。ポップアップして外気を導入できる。これは陽が喜びそう。
荷室を見ると、背中合わせで座ることができるサードシートが格納されていた。7人乗りである。これならば、家族全員で移動できる。
一通り説明を受け、クルマを降りると店員が、
「エンジンかけてみましょうか?」
提案してくる。
「はい。」
キーをON。
グローランプが消灯。
スタート!
キュキュキュカラカラカラ…
気になる煙も始動時に一瞬ボワッと薄いのが出ただけで、あとは何もない。後に回るとファンヒーターのようなNOXの臭いがするだけ。
「なかなか調子いいでしょ?」
得意げな店員。
「はい。」
再度運転席に座る。
室内は防音性能が高く、なかなかの静粛性。
エンジン音も僅かにカラカラ聞こえるだけ。
そう言えば走行距離は?
古いクルマだ。ものすごいことになっているのでは?
メーターを見てみると15万キロ超え。でも約30年前のクルマ。年間にすると5千キロ程度しか走ってない計算。ちなみにタイミングベルトもちゃんと交換してある。
ここで。
L型ディーゼルエンジンは燃料系統があまりよろしくなく、軽油がダダ漏れになることがある。この2L-THEに於いてもその傾向がある。でも、これもちゃんと対策済みだそうだ。
隠さずにおしえてもらえてありがたい限り。
外装は?
バンパーに小さな傷はあるものの、大きなヤツは無い。
気になる事故歴も無い。
塗装の状態は、前オーナーが車庫に格納していた様で、これまた程度がいい。
半年または5千キロの保証もつけてくれるという。
試乗してみたかったが、残念なことに車検が無い。これだけは諦めた。
見積もりしてもらうことにした。
しばらくすると、見積書を持って店員が出てくる。
支払総額60万円。
そのまま契約することにした。
納車は10日後だそうだ。
平日だったので、18時以降に来てもらうことにする。
写真を撮って、帰って陽に見せると思った以上に喜んだ。
納車の日が楽しみだ。
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