ヒグマのフレンズ
砂塚一口
第1話 セルリアンハンター
『ありがとうございます、ヒグマさん! こ、この御恩は一生忘れません!』
弱気な伏せ目と、真っ白な髪の毛が綺麗だった。
彼女は今も元気にしているだろうか。
「ヒグマさん! 後ろです!」
「大丈夫、見えてる!」
リカオンの警告に呼応。私は熊の手を大きく振りかぶる。
「私が先に抑えます!」
キンシコウの如意棒が青いセルリアンの肌を抉り、コアを露出させた。
私は畳み掛けるようにして熊の手を振り下ろした。鈍い音が響き渡り、セルリアンが一度泡立ったかと思うと、光の粉になって消失する。
私は油断せずに辺りに気を配った。消滅しきらずに飛び散った欠片がまだ生きてはいないか。数呼吸の間、私は神経を極限まで尖らせていた。そうしてようやくセルリアンの消滅を確信する。私は口を開いた。
「ふん、他愛も無かったな。野生開放を使うまでもなかったぞ」
「上手くいきましたね」
「いや~ひやひやでしたよ」
リカオンがへなへなとその場に崩れ落ちていた。情けない奴だ。
「この程度で根を上げているようじゃ、この先やっていけないぞ。しゃきっとしないか」
「まあまあ、かなり高速で移動するタイプのセルリアンでしたし、よくやってくれましたよ」
キンシコウが私を取りなそうとしてるが、その表情は困った子供でも宥めるみたいだ。
私はむっとする。
「いいか、私たちはセルリアンハンターなんだ。パークの中で一番強くないといけないんだ。そうじゃなきゃ、誰がセルリアンからフレンズたちを守ると言うんだ」
「うぅ~、さすがヒグマさんはいうことが違いますね……」
リカオンはすぐに弱音を吐く。
その態度に関心はしないが、そのくせこいつは注意深く周りを観察していることが多い。特に集団戦闘になると、これが意外と役に立つのだ。
そしてキンシコウ。彼女は一人でも十分に強いのだが、サポートに回ったときにその真価を発揮する。私の望んだ時に望んだ場所に居て、適切な補佐をしてくれる。だから私はキンシコウをとても重宝していた。その事を本人には言わないけれど。
セルリアンハンターの群れの長として、私がこいつらを引っ張らないといけないのだ。フレンズは放っておくとすぐにセルリアンにやられてしまうような弱っちい奴らばっかりだ。だから、私みたいな強い奴が戦闘を切ってセルリアンと戦わないければならない。
そうじゃないと――
「ヒグマさん、少し休憩しましょう?」
キンシコウが心配そうに私を覗き込んでいる。私は休憩なんていらないと突っぱねて、熊の手を担いで次の獲物を探し始めた。
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