OutNumber
えにし
第1話
俺の名前は桐生鹿之助。
探偵だ。
探偵内容はなんでもござれだ。猫探しから浮気まで。
依頼と俺のやる気次第でなんだってやる。
「だがしかし、しかしだ‥‥」
全く仕事がこない。
「故に、我アリ! がはは」
なんていったところで仕事はないわけで‥‥。
仕事がなけりゃあご飯が食えぬ。
「今日もお客さんはこなさそーですね」
「あー‥‥誠士郞よ‥‥も。って言うな」
こいつは誠士郞。苗字は‥‥なんだったっけ?
誠士郞が学校を卒業したその足でここへ押しかけ、雇ってくれと言ってきて以来、ここに住み着いている。
その学校に調査潜入してるところで、出会ったんだが。
「まあ正直いってジャマだ。むさいし」
誠士郞が女の子だったらなあ。いやーそりゃもう漫画!
お風呂に入ってる所を俺も-!なはんて‥‥。
「鹿之助さん、鼻穴が広がってますよ」
「‥‥うるさいな」
「鼻穴よりも‥‥今日の夕飯なんですが」
「うむ‥‥ゆゆしき問題だ‥‥誠士郞よ」
「なんですか」
「今日のビラ配りは終わったのか。立派な営業だぞ」
「紙がもうありません」
「‥‥‥」
「声‥‥声だしていきます?」
「ただうるさいだけだろ、やめようぜ‥‥あーしかし仕事がこないなあ」
「やっぱ‥‥手書きは読みづらかったんじゃ?」
「仕方ないだろ、プリンターはあるがインクはないんだから」
「素直に立花さんに借りればよかったのに‥‥」
「うるせー、あいつに借りるくらいなら手書きだ!」
誠士郞のいう立花ってのは、このオフィスビルの最上階に構える事務所‥‥立花探偵事務所という。ライバル会社にインク貸してくれなんて言えるわけもないだろ。
「でも、昔からの知り合いなんでしょう?」
「そりゃあそうだが」
「僕、行ってきましょうか? あそこにいくとおやつくれるんですよー」
「おい誠士郞、今いそいそと着ている上着を脱げ」
「はい?」
「俺のおやつをどうして持って帰ってこないんだ。それでも助手か!」
「インクはだめでもおやつはいいんですね‥‥」
「う、うるせー! あいつの事はどうでもいい。今夜の夕飯の問題を片そう」
「あ! そろそろじゃないですかね、収穫」
「むむ! そういえばあったな」
こんな非常事態もあろうかと、家庭菜園セットを買っておいたんだった。
すっかり忘れてた。
「見て下さい鹿之助さん、もやしが! ちょっと出てます!」
「おお! でかしたぞ誠士郞!」
「鹿之助さんが食べたいといってたビワは‥‥ちっとも芽が出ませんね」
「高かったのにな」
「ここ地下ですし、日光を当てないとだめなんじゃないですかね?」
「そうなのか?」
「大抵のものはそうだとおもいますよ?」
「なんで買うときいわないんだよ!」
「えーだって鹿之助さんが食べたいっていうからー」
「日の当たる場所に植え替えるか?」
「そうですね‥‥それが一番よさそうですが‥‥場所が‥‥」
「場所‥‥かあ‥‥」
「そうですね‥‥」
「‥‥」
お互い沈黙ののち、恐らくお互いが一つの結論に行き当たる。
「最上階が‥‥いいよな」
「ですね‥‥お日様もあたるでしょうし‥‥」
「‥‥幸せの種を植えといたとか、適当に誤魔化しておこうか」
「正直に伝えたほうがいいんじゃないですか?」
「そ、そうか‥‥」
「じゃあ、行きましょうか」
誠士郞はビワの鉢植えを抱え始めた。
「ビワ食べたいしな‥‥しょうがない。久しぶりに会いに行くか」
俺たちはこのビルの最上階、立花探偵事務所に行くことにした。
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